磯焼けの海を海藻の森林へ
自然環境部 海域担当チーム
筒井 浩之
昨年の秋ですが、藻場などの調査で訪れた日高地方で、調査を終えて船で漁港に戻ると、見たことのないものを目にしました。工事現場などでよく見るバックホーを載せた大きなフロートのようなものが海の中に入っていく様子でした(写真1) 。
調査船の船長に聞いたところ、「雑海藻を駆除する機械」とのことで、しばらくの間、周辺の海域で作業をするとのことでした。
写真1 漁港で見た雑海藻駆除の機械
コンブにとって有害な大型の雑海藻がコンブ漁場に大量に繁茂すると、本来コンブが着生していた場所が狭くなるだけでなく、コンブに必要な光や栄養塩などの供給を減らし、コンブの発生や生育を妨げてしまいます。つまり、コンブの生産性を高めるための技術が雑海藻駆除となります 。
駆除の方法としては、写真1のバックホー(専用の駆除ホークが付いている)を用いた方法、複数のチェーンを機械で回転させて海底から雑海藻を削り取る方法、コンクリートとチェーン塊をクレーン船で引き寄せて削り取る方法、水中ブルドーザーを用いる方法といった建設会社へ委託して行う方法のほか、海底洗耕機やチェーンを船で曳いて雑海藻を削り取る方法、波の力でチェーンを振り回して雑海藻を削り取るチェーン振りなど、漁業協同組合や漁業者が自ら行う方法があります。
話は少し変わりますが、調査船の船長から聞いた話では、その港の周辺には、ミツイシコンブのほか、マコンブが生育しているそうです。北海道では道南地域にのみ分布すると思っていたマコンブ(図1)が日高地方に生育分布していたことに少し驚きました。また、日高地方ではマコンブは駆除の対象になっているとのことです。海域によって味などが違うのかもしれませんが、高級なコンブのイメージが強いマコンブが、ここでは邪魔者扱いされていることを考えると、ちょっと複雑な気持ちになりました。
出典: 「社団法人 日本水産資源保護協会(1996):わが国の水産業 こんぶ」
図1 主なコンブの産業的な分布
参考文献
北海道立釧路水産試験場(1995)雑海藻駆除技術によるコンブ漁場の回復
寺井 稔(2014)雑海藻の駆除によるコンブ漁場の保全について.水産工学,51巻1号,55-58.
マコンブ、ミツイシコンブ、藻場造成、雑海藻駆除