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エコ森林通信 vol.27

サケ・マスの遡上からみえる森の豊かさの指標

自然環境部 陸域担当チーム
森山 友雄

 令和4年の北海道における秋サケ来遊数は、予想では2,052万尾1)でしたが、実際には10/31現在で3,107万尾2)と予想を大幅に超えています。地域別では北海道太平洋 (根室海区~えりも以西海区)と北海道日本海(オホーツク海区及び日本海区)では差がありますが、北海道全体では前年同時期と比べて174%も上昇したそうです。また、河川で人工ふ化放流用に捕獲されたサケは北海道全体で311万尾、前年同時期と比べて186%の上昇率で、1989年以降では6番目に多い捕獲数となっています1)

 

8月1日~10月31日までのサケ北海道来遊数(累計値).2022年は速報値.

 

8月1日~10月31日までの北海道サケ河川捕獲数(累計値).2022 年は速報値.

 

 今年はサケの遡上数が近年稀に見るほど多いということで、11月初旬、千歳川のインディアン水車へ確認に行ったところ、サケの多さに圧倒されました。その頃、サケ・マスの産卵床調査を日本海に注ぐ河川で行っていましたが、ここでも遡上したサケの数が多く、調査中はサケが足にぶつかるほどで、上述したデータを裏付ける経験でした。            

 

 ところで、河川へ遡上し、自然産卵を終えたサケ・マスやその死骸(ホッチャレ)は陸上の動植物の栄養になっており、森を豊かにすることはよく知られています。私たちが調査をした河川はサケの遡上が多かったため、周辺の森は豊かだろうと想像できますが、実際にその栄養が陸上生物に利用されているかは、炭素や窒素を対象とした安定同位体比分析で推定・評価されます3)

 現在、サケ・マスの遡上障害となっている落差工や砂防ダム等に魚道を整備する事業が各地で進められています。魚道の設置によりサケ・マスが産卵のために河川全域に遡上すれば、産卵床数の増加にともない資源量が増え、さらにその流域の森は豊かになっていくと思います。下図4)に示したような産卵床の分布と魚道整備状況のマップは、森の豊かさを示す指標になるかもしれません。

 

1)2022(令和4)年さけます来遊状況(第3報:10/31 現在).(国研)水産研究・教育機構 水産資源研究所 さけます部門 資源増殖部
http://salmon.fra.affrc.go.jp/zousyoku/salmon/R4comment_1031_return.pdf   http://salmon.fra.affrc.go.jp/zousyoku/salmon/R4comment_1031_river.pdf

2)令和4年(2022年)の秋サケの資源状況について. (地独)北海道総合研究所 水産研究本部さけます内水面水産試験場https://www.hro.or.jp/list/fisheries/research/hatch/section/shigen/att/R4akisakeyosoku.pdf

3)北海道産サケ野生集団の評価と流域生態系の動植物に及ぼす影響の解明 平成21~23年度(3年間). (地独)北海道総合研究所 水産研究本部さけます内水面水産試験場
https://www.hro.or.jp/pdf/2_seitai.pdf

4)河川環境修復によるサクラマスの自然再生産資源の回復.(地独)北海道総合研究所 水産研究本部さけます内水面水産試験場
https://www.hro.or.jp/research/result/info/R01seika(12).pdf

生物多様性、J-クレジット、脱炭素、森林サービス、サケ、マス、遡上、魚道

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