「不伐の森林」は環境保全に貢献しています
クマゲラと森林との関係
自然環境部 陸域担当チーム
米田 豊
北海道を代表する鳥の一つとして、クマゲラが挙げられます。クマゲラは、我が国では北海道全域と本州北部の一部地域のみに生息しています。北海道では生息数は多いとされていますが、本州北部の生息数は非常に少なく、絶滅が危惧されています。このため、国の天然記念物に指定され、環境省のレッドリストには、絶滅危惧Ⅱ類(絶滅の危険が増大している種)として記載されています。
クマゲラは、カラス程の大きさで、日本のキツツキの仲間では最大です。黒い身体で頭が赤く(オスは額から後頭まで、メスは後頭のみ)、長いくちばしを持ち、その愛らしい姿と大きさから、知名度も高く、人気の高い鳥といえるのではないでしょうか。
クマゲラは、大木のある天然林や、人工林と天然林が混じる場所に生息しています。カラマツなどの人工林も餌場として利用し、時には高齢のトドマツ人工林を営巣林として利用します。
クマゲラの餌は、主にアリやカミキリムシ等の樹木に生息する昆虫類です。身体の大きさから想像するに、大量の昆虫類を食べていると思われます。餌を獲る際には、くちばしでつついて樹皮を剥ぎ、樹皮と木材の間に入り込んだ虫を食べます(写真1)。また、木の幹に大きな楕円形の穴を開けて、木材の中の虫を食べることもあります(写真2)。この行動から、アイヌ語ではクマゲラを「チプタチカプ(舟・掘る・鳥)」などと呼びます。クマゲラの舌は非常に長く、木の幹の奥にいる虫を引っ張り出して食べることができます。
クマゲラは、樹木に雌雄共同で穴を開けて巣を作ります。大きな身体であるため、営巣木には直径が40cm以上の太い木が必要です。また、通常、樹皮がなめらかで真っすぐな木が選ばれます。これは、ヘビなどの天敵が木を登ることを防ぐためであると考えられています。巣穴の入り口のサイズは、ちょうど大人が手の平をつぼめた程度です。巣の内部の深さは、50㎝程にもなります。営巣木は、数年続けて利用されることが多いとされています。
春先になると、なわばりの主張や求愛のためのドラミングの音や鳴き声が聞こえ、クマゲラに出会える機会があるかもしれません。しかし、繁殖に影響を与えないように、そっと見守ってあげましょう。
以上、ご紹介したように、クマゲラの生活は森林と密接に関わっています。このため、クマゲラがこれからも生きていくためには、太い樹木と大量の昆虫を育む豊かな森林が不可欠です。
写真1 餌を探すクマゲラのオス(筆者撮影)
写真2 クマゲラの採餌痕(筆者撮影)
弊社は、地域の自然環境について把握し、自然環境の保全へ向けた総合コンサルティングを実施いたします。また、札幌市郊外に「エコニクスの森林」を保有し、鳥類などの野生生物の生息環境として保全するとともに、自然環境に関する自社研究の場として活用しています。