洋上風力発電に関わる環境調査
北海道のカレイ類:マガレイ
電力環境部 火力発電所担当チーム
齊藤 一
近年ではエネルギー問題や地球温暖化の対策として洋上風力発電への需要が大きくなっています。洋上風力発電は発電施設自体が魚礁としての効果があると言われており、様々な生物が施設に付着・脱落することでそれらが餌となり、施設周辺の魚類や底生生物の増加が期待されます。また、底生生物を目当てに底生性の魚類も施設周辺に集まってくることが考えられます。今回はこの底生性魚類に着目して、北海道沿岸において、釣り(遊漁)の対象として、食用(煮つけ、刺し身、焼き魚など)としても人気の高いカレイ科魚類のマガレイについてご紹介いたします。
カレイ科魚類は異体類とも呼ばれ、海底に横たわっている扁平な魚です。眼は基本的に右(腹を下にすると右向き)になります(ヌマガレイは除きます)。
マガレイは2歳頃から成熟し始め、寿命は約10年です。北海道での産卵期は5~7月、水深15~80mの沿岸域で産卵(多回産卵)を行います。そして産卵後、親魚はまた沖合へともどります。これを一生のうち何度か繰り返します。
少し専門的な話になりますが、卵は淡い黄橙色の球形で、卵径は0.8~0.9mm前後の分離浮性卵(海水の比重よりも小さく水中を漂う卵)で海表面へ浮上しながら発生(成長)を続けます。
マガレイの仔魚 尾部体側の黒色素叢
孵化直後の仔魚は全長2~3mm程度で、体形は細長く左右対称、成魚とは異なる体形で、この時点で眼は一般的にイメージされる魚と同じように体の両側にあります。その後、成長とともに左眼が右に移動し、左右不相称の変態過程をたどります。仔魚期の種判定は主に黒色素胞(こくしきそほう)の分布状況を観察します。
マガレイ仔魚の特徴は尾部体側の黒色素叢(こくしきそそう;黒色素胞の集まり)が背・腹縁に等間隔で3対が対称的に配置されることです。そして、全長が15mmを超える頃には眼の移動も完了し、稚魚期に入り、ここでようやく親魚と同じカレイらしい姿になり海底に移動し、1年程を過ごします。※1,2,4,5
仔魚は若狭湾、新潟沿岸、北海道沿岸、東北地方の太平洋沿岸で春季を中心に出現します。※4
成魚の体長は35cmくらいまで成長します。体色は有眼側では一様に緑褐色で、不透明な小さい白点が密に散らばっていますが、その程度には個体差があります。無眼側は淡灰色ですが、尾柄(尾の付け根)に淡黄色域があり、これが他種と見分けるポイントとなります。
口が小さく、下顎がやや突き出ていることから、地方によってはクチボソ(クチホソ)と呼ばれています。
成魚は、九州以北の日本海沿岸と、土佐湾以北の太平洋、東シナ海、千島列島、サハリンと幅広く日本沿岸に分布します。※1,5
マガレイ Pseudopleuronectes herzensteini
マガレイの生息場所は基本的に砂地の海底です。今後も釣り(遊漁)の対象として、食用として楽しみを続けるためには、生息場所である海の中の状況を知っておく必要があります。弊社では底質調査や流況調査などの環境調査のほかに魚礁調査、漁獲調査に関する豊富な実績があります。また、長年培った生物分析の技術ついても有します。海に関わる事柄で気になることや、お困りのことがございましたら、お気軽にご相談ください。
【参考】
※1 尼岡(2016)日本産ヒラメ・カレイ類. 東海大学出版部
※2 尼岡ら (2020) 北海道の魚類 全種図鑑. 北海道新聞社
※3 中坊(2013)日本産魚類検索 全種の同定 第三版. 東海大学出版部
※4 沖山(2014)日本産稚魚図鑑 第二版. 東海大学出版部
※5 鳥澤ら(2004)新 北のさかなたち. 北海道新聞社
※6 日本水産資源保護協会(2006)主要対象生物の発育段階の生態的知見の収集・整理.
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