洋上風力発電に関わる環境調査
刺し網・定置網への漁業被害について
電力環境部 泊発電所担当チーム
山岸 光耀
2022年9月中旬頃、北海道中南部太平洋沿岸に位置する登別市の沖合約7kmの海域の刺し網にアカウミガメがかかりました。ウミガメと聞くと南方の温かい海を優雅に泳ぐ姿をイメージすると思いますが、昨今の地球温暖化等の影響によって海水温が上昇し、北海道周辺でもアカウミガメが回遊しやすくなっている事が原因の1つとして挙げられています。アカウミガメが網に絡まることで刺し網を切断せざるを得ない状況になるなどの漁業被害も報告されており、今後も海水温の上昇が継続するとウミガメによる漁業被害も増加してしまうことが懸念されます。
刺し網については前回の「洋上風力通信Vol.16」でご紹介させて頂いた通り、海底地形や海中の構造物の影響で漁具が破断するほか、生きものが網にかかることでも被害を受けます。勿論、その他の漁法においても漁具の破損や流失は発生しますが、その原因は多岐に亘ります。
ウミガメと同様に生きものが網に絡まることで引き起こされる漁業被害の中で代表的なものとしてはクラゲ類が挙げられます。特に大型になるエチゼンクラゲは、2009年には大量に定置網の中に入り、北海道を含む全国各地で深刻な漁業被害をもたらしました。2021年にも京都府や福井県の日本海沿岸では大量の出現が確認されています。
写真 定置網に入網したエチゼンクラゲ
また、同じクラゲ類でも小型のミズクラゲは漁業被害ではありませんが、臨海型発電所の取水口(冷却水として海水を取り入れる開口部)に大量に流入してしまうと、その取水経路に設置されている除塵装置(海水のゴミを取り除く装置)のメッシュを詰まらせてしまうことがあります。そのため、発電所に係るモニタリング調査を行っている弊社ではミズクラゲの出現時期に合わせて目視調査を実施しているほか、過去にはミズクラゲの迷入防止対策として網を設置したり、その維持管理の作業を実施してきました。また、漁業関係者への聞き取りやインターネットなども活用し、日頃からクラゲの情報を積極的に収集しています。
弊社では北海道積丹半島に位置する泊村において周辺海域のモニタリング調査を長年続けており、海域における環境調査のほかに、陸域における鳥類などの環境調査や生活環境に係る騒音振動調査などの経験も豊富です。
これらは洋上風力発電施設の供用前後における環境影響調査にもお役に立てると思いますので、何かお困りの事がございましたらお気軽にご相談下さい。
写真 エチゼンクラゲ 写真 ミズクラゲ
参考資料
NHK 環境(2022):北海道でアカウミガメ 1か月で20頭以上が網に 一体何が?
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20221123/k10013899521000.html
財団法人電力中央研究所 環境科学研究所 環境ソリューションセンター(2008): 発電所を困らせる水の生き物たち
https://criepi.denken.or.jp/jp/env/result/pdf/ikimono.pdf
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