お仕事で施設の建設前の調査をさせていただくことがたびたびあります。
特に印象的なお仕事として、ダムの建設前の調査があります。ダムは水を貯めるために作っているので、一度水を貯めてしまえば、そこには二度と行くことはできません。
そこにはかつては道が通っていたり、住宅や畑があったりなど、人の生活があることもあります。我々が調査に入るころには、たいていの場合は、そのような生活感はほとんどなくなっていて、その代わり、ダンプやバックホウなどがせわしなく動く建設現場となっています。それも、ダムの完成が近づくにつれて、だんだんと減って行き、閑散としていきます。湛水試験※1が近づくころには、荒涼とした工事の「痕」が残されていきます。
私はこれまでに、道内の2カ所のダムの湛水前後に立ち会うことができました。
今年は、そのうちの1つであるサンルダムの湛水に立ち会うことができました。
サンルダムには2015年から調査に携わっており、今年で4年目です。ダムが完成すると、湛水試験として、サーチャージ水位※2まで水を貯めます。今はこれに向かって水を貯めているところです(筆者執筆時点)。これで問題がなければ、ダムは本格的な運用を開始することになります。
ダム底が見えたのは、今年の6月の調査が最後でした。そして、現在はすっかり水が溜まって、湖になっています。
工事痕の残るダム湖中央付近(左:2018年6月、右:2018年8月)
ダム湖上流サンル大橋より下流方向(左:2017年9月、右:2018年10月)
あの場所にはもう行けないんだなぁと思い、今回も複雑な思いで湖を眺めてきました。
ダムの底には、そこに暮らしていた人、そこで働いていた人など、いろいろな人のいろいろな思いが詰まっていると思います。
機会があれば、そんな思いがあるのかと思って、ダム湖を眺めてみてください。
※1:ダムが完成した後にダムに問題がないかをチェックするための試験
※2:洪水時、一時的に貯水池に貯めることが出来る最高の水位