当社では海藻の分布を把握する方法のひとつとして、計量魚群探知機を用いた海上調査を導入しています。
図1 計量魚群探知機
(左:演算器、中:送受信機、右:送受波器、手前:送受波器を船に固定するための器具)
魚群探知機は超音波を海中に発射し、海中の生物や海底にあたった反射音をとらえることで、生物や海底の位置関係をエコーグラムという図に示します。魚(魚群)の分布や水深を知るための道具ですが、海藻もとらえることができます(図2)。
一般の魚群探知機は、発射した超音波の反射をとらえて表示しますが、計量魚群探知機は、発射してから反射して戻ってくるまでの減衰などを補正して定量性を確保します。また、計測したデータを記録媒体に収録できる点で、一般の魚群探知機と異なります。収録したデータは専用の解析ソフトやGISなどで解析が可能です。
図2 アマモのエコーグラムの一例
図3 図2の海域で撮影したアマモ
藻場の分布を把握する方法は、計量魚群探知機のほか潜水、ドローン、航空測量などが用いられますが、どれも一長一短があります。潜水士による目視観察や枠取は、対象範囲の海藻の種類や組成などを詳細に把握することが可能ですが、広範囲の藻場の状況を把握するには、膨大な労力と時間がかかります。ドローンや航空測量は空中写真や航空測量などから海藻の分布を短期間で広範囲に調べることができますが、風や照り返し、雲量など調査時の天候の影響を受けてしまいます。また、潜水、ドローン、航空測量は、濁りが著しい透明度の悪い海域では調査が困難です。
計量魚群探知機を用いた調査は、海水の濁りの影響を受けないので、図3のような濁りのなかでも調査が可能です。海藻の有無だけでなく、鉛直方向の量(海底からの藻場の厚さ、海藻の高さ)もわかるため、海藻が多い・少ないなどの情報も知ることができます。また、海藻の反射の強さと海藻の量の関係が分かれば、調査した範囲内の海藻の現存量を推定することも可能です。量に関する情報は、海藻や海草が取り込んだ炭素の量などを把握するうえでも重要な情報で、脱炭素社会に向けて近年注目されているブルーカーボンを定量する際にも不可欠となります。
表1 調査手法別の特徴
メリット | デメリット | |
計量魚群探知機 | ・比較的安価 ・濁りの影響を受けない ・水深の深い所でも計測可能 |
・水深の浅い所では計測が困難 |
潜水 | ・調査範囲のすべての詳細な把握が可能 | ・広域調査は費用、労力が膨大 |
ドローン |
・比較的安価 |
・濁りや天候(風、照り返し)の影響を受ける ・水深の深い所は困難 ・僅少種、小型種には適さない |
航空測量 | ・広範囲を効率よく把握可能 | ・濁りや天候(風、照り返し)の影響を受ける ・水深の深い所は困難 ・僅少種、小型種には適さない ・高価 ・大がかり |
図4は、実際に計量魚群探知機で調査した際のコンブの分布を示しています。東西約1.5㎞、南北約0.3kmの約45ヘクタールの範囲を測線間隔を約50mで調査しました。調査に要した時間は約2時間、解析に要した日数は約2日で、合計3日程度でコンブの分布を評価することができました。
図4 計量魚群探知機で調査したコンブの分布の一例
図5 調査状況(左:送受波器、右:演算器、モニタ、操作器など)
計量魚群探知機を用いた調査は、このようにアマモやコンブなどの大型海藻の把握に適しており、他にもワカメ、ホンダワラ類など水産有用種でも評価が可能です。
但し、調査船に計量魚群探知機を搭載して調査するため、船が侵入できない「水深が浅い箇所では調査ができない。」、調査船直下のデータを取得するため、船が通過しない「測線と測線の間は解析による推測となる」など、十分とは言えない部分もあります。これらについては、潜水やドローンなどを併用することで補完して対応します。
近年、激しい海洋環境の変化により、藻場の分布も年々変化しています。これらの迅速な現況把握は、持続的な漁業活動、環境保全には欠かせません。
当社がこれまでに蓄積した藻場調査の技術によって、その場所に合った最適な評価を行います。まずは、相談ください。