現在、弊社では藻場造成に向け様々な取り組みを行っております。2020年11月からは弊社が設置した水中ライブカメラの前で、簡単な施設を設置してコンブの栽培試験に取り組み、現在は大きく生長しています。コンブは10月ころから成熟しはじめ遊走子と呼ばれる種を放出します。
今回はコンブを着生させている施設の気持ちになり、これまでを振り返ろうと思います。
~~とある施設の話~~
今「私」は多くの魚たちに囲まれ、とても賑やかに過ごしています。
私からはコンブが育っていて、ウニやヤドカリがやってきたり、エゾメバル、ウミタナゴ、アイナメやキュウセンなどの魚たちが集まり、まるで魚礁のようです。
そう言えば、最近はずいぶん遠い南から旅をしてきたアミメハギも旅の疲れを癒していました。彼らは藻場を生息域にしているので私に生えたコンブに集まってきたのでしょう。
全体像 |
集まっている仲間たち |
上:キュウセン、下:アイナメ | アミメハギ |
2021年9月3日の私(施設)
振り返れば、2020年11月1日に2人のダイバーが、私をこの場所に設置しました。
単管パイプとコンクリート板で組み立てられたばかりの私のまわりには、たまにウニやヤドカリが横切ったり、ダイバーが定期的に私の様子を見に来てくれる程度でとても寂しいものでした。
組み立てられたばかりの私 | 設置してくれたダイバー |
設置当時(2020年11月1日)の私(施設)
それから約1ヶ月が経ったころ、私からコンブなどの海藻の子供たちが芽を出し、少しずつ私の周りが変わり始めました。
そのころ(12月~1月)の私をご覧ください。私に付着した海藻、特にコンブの生長が分かると思います。
12月12日 | ||
12月24日 | ||
1月25日 |
2020年12月~2021年1月の私(施設)
ここから先はあっという間にコンブが生長しました。途中、ウニに食べられたり、私に巻き付いたりと、色々ありましたがコンブは順調に、大きく育ってくれました。
4月6日 | コンブを食べるウニ(4月6日) |
6月2日 | 巻き付いたコンブ(6月2日) |
2021年4月、6月の私(施設)
8月ころになると、大きく育ったコンブが徐々に短くなっていることに気が付きました。私を見に来ているダイバーは、「末枯れ」という現象だと教えてくれました。
末枯れとは、夏~秋にかけコンブが先端部から枯れていく、生理的な現象です。コンブは末枯れとともに子供を産む準備を始め、秋~冬にかけて子供を産み、その子供たちは冬から春にかけて新たな場所で芽を出し、命をつないでいます。
今のコンブが短くなってしまうのは少し寂しいですが、春からその子供たちに会えることを楽しみにしています。
末枯れがみられるコンブ(9月3日)
私は、私が基点になってもっともっと広い海が、海藻だらけでたくさんの生き物が集まる賑やかな場所になってくれることを望んでいます。
さて、今回はコンブを着生させている施設の気持ちになってみました。
弊社ではこの海が豊かになるような藻場造成の技術開発を進めています。末枯れが始まり、これからの季節はコンブが成熟し遊走子を放出する再生産に重要な時期に移ります。
藻場造成の技術は、全国的に見てもまだまだ課題が残っていますが、「私(施設)」が喜んでくれるような課題の解決に向け取り組んでまいります。今後も技術開発の様子を配信いたしますので、応援の程よろしくお願いいたします。
【参考資料】
北海道大学 LASBOS Moodle HP「コンブ胞子体の成熟機構解明」(https://repun-app.fish.hokudai.ac.jp/course/view.php?id=601)