クジラ・イルカを調査する
自然環境部 海域担当チーム
工藤 俊樹
日本周辺には41種類の鯨類が生息していると言われ、様々な研究機関においてその調査・研究が行われています。今回は鯨類の調査方法、特に非致死的な調査方法についてご紹介します。
鯨類の調査方法は、
① 捕殺調査
② ストランディング調査
③ 直接観察
の大きく3種類に分けることができ、①は名前の通り致死的であり、捕鯨船を必要とする調査方法になります。②と③は非致死的であり、比較的費用も抑えられる調査方法になります。
ストランディング調査とは、ストランディングした死亡個体をサンプルとして調査する方法です。そもそもストランディング(stranding)とは広い意味で、鯨類が陸上に打ち上がったり(座礁、漂着)、漁網に誤って入ったり(混獲)、漁港や河川に迷い込んだり(迷入)することを表します。死亡個体を調べて死亡した原因だけでなく、食性や社会性、汚染物質、寄生虫などについての調査研究に利用されています。もし、鯨類のストランディングに出会った場合は「ストランディングネットワーク北海道」のホームページを参考にして関係機関への連絡をすることで、鯨類の調査研究に役立つことがあります。
ストランディングしたコビレコンドウ(左)と混獲されたネズミイルカ(右)(筆者撮影)
直接観察は、野生の鯨類を船上や海中、上空から直接観察する方法であり、データロガーなどの機器を装着させて行動等の調査を行うことも多くなっています。船上からの目視調査は、あらかじめ設定された調査測線上を一定速度で航行して観察・記録する点において、レジャーであるホエールウォッチングと大きく異なります。
目視調査した海域の面積と発見群数から海域内の推定個体数を算出する方法として、ライントランセクト法という方法があります。ライントランセクト法による個体数推定法は、国際捕鯨委員会科学委員会において最も精度の高い個体数推定法と考えられており、鯨類の主要な個体数推定法となっています。
その他の鯨類調査方法として、洋上風力通信Vol.10で紹介しました音響調査や飼育下における行動調査などがあります。
目視調査状況(筆者撮影)
弊社は、洋上風力発電事業における環境影響評価をはじめとした環境調査や生物分析を北海道を中心に取り組ませていただいております。鯨類を含む海棲哺乳類からプランクトンまでの幅広い生物の知見を弊社では保有しておりますので、お困りのことがございましたらお気軽にお問い合わせください。
参考資料
北海道大学水産学部練習船教科書編纂委員会(2019):水産科学・海洋環境科学実習.
松田純佳(2021):クジラのおなかに入ったら.ナツメ社.
田島木綿子(2021):海獣学者、クジラを解剖する。海の哺乳類の死体が教えてくれること.山と渓谷社.
山田格(2019):イルカ・クジラを理解するために―死んでしまったイルカ・クジラを活かす.生物の科学遺伝,73-5:442-446 .
ストランディングネットワーク北海道
https://kujira110.com/?page_id=424
洋上風力、漁業影響調査、海生哺乳類調査、a-tag、鳥類調査、コウモリ類調査、環境影響評価、配慮書・方法書、アセスメント、モニタリング