漁業影響に係るモニタリング調査について
電力環境部 泊発電所担当チーム
納谷 琢馬
近年、再生可能エネルギーの事業化が進められており、今、着目されているものに洋上風力発電が挙げられます。洋上風力発電事業は長期間にわたり漁業者との共存共栄が求められるため、各地で漁業影響調査が実施されています。
漁業者との共存共栄については「洋上風力通信Vol.11」で紹介しました通り、漁業者をはじめとした地域住民と相互理解を深めることが重要です。
洋上風力発電事業の実施には、漁業に支障を及ぼさないことが前提となるため、いかにその地域の漁業実態や地元ニーズを把握できるかにかかっています。そのため、詳細な漁業影響に関わるアセスメント調査を先ずは行い、洋上風力発電施設の建設前と建設後に影響を与える場所と対照区において、漁業対象種および漁獲数等を予測評価し、漁業者と事業者が共に利益を得るwin-winの関係を築くことが望ましいです。
洋上風力発電施設の建設影響は、漁業対象種およびその回遊ルート等の変化が懸念される一方、水中部は人工魚礁として期待されています。しかしながら、洋上風力発電施設の構造物は、魚礁利用についての知見は乏しく、モニタリング調査を継続することにより、データを蓄積していくことが重要になります。
モニタリング調査としては、魚類は回遊するため、地元漁業者の知識や経験に耳を傾けることや、魚市場における漁獲物調査も有効であるとされています。
魚市場では四季折々の魚介類が水揚げされますが、水揚げされる魚介類は営む漁法によっても異なります。底びき網漁や底建て網漁では底魚類(カレイ類、スケトウダラなど)やエビ・カニ類など、定置網漁や刺し網漁では回遊魚(ブリ、サケ、サバなど)が水揚げされて魚市場に並びます。そのため、様々な漁法による四季を通したモニタリング調査がとても重要となります。このため、当社では洋上風力ではありませんが、発電施設に係わる調査として、四季ごとに、底建て網漁、定置網漁で水揚げされた魚介類の買い取りと併せて、漁業者の協力を得て刺し網調査によるモニタリング調査を実施しています。
刺し網の設置および揚収のノウハウは前浜で長く漁を営んでいる漁業者の協力なしでは調査は成り立ちませんが、水揚げされた漁獲物については以下の写真のように私たち社員が網から外し、種類ごとに選別し、数量、重量を計測します。こうしたノウハウを活かしながら、漁業者を含む地域住民との相互理解を深めることが出来るよう日々取り組んでいます。
私が現在住んでいる北海道南西部にある泊村ではこれらの四季モニタリング調査を長年実施しており、漁業者と良好な関係を築いています。
写真 刺し網からの取り外し作業
参考文献
社団法人 海洋調査協会(2006年):海洋調査技術マニュアル-海洋生物編-
海洋再生可能エネルギー発電設備整備に係る海域の利用の促進に関する法律
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=430AC0000000089
地方独立行政法人北海道立総合研究機構 水産研究本部 マリンネット北海道(2013年3月) 代表的な漁具・漁法の解説
https://www.hro.or.jp/list/fisheries/marine/o7u1kr000000dhif.html
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