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2022年12月25日

藻場通信 vol.24

とあるコンブのルーツをたどる

自然環境部 海域担当チーム
田村 勝

 

 早いもので2022年も残すところわずかとなりました。年末年始は実家に帰省し、久しぶりに両親や親戚と会ってのんびり過ごそうという方もおられると思います。仏壇に手を合わせてご先祖様を思い、自分のルーツを見つめ返す、そんなお正月もいいでしょう。

 さて、今回紹介するのは、2022年7月に函館港の海底に着生していたコンブです(図1)。

 


図1 海底に着生したコンブ(2022年7月)

 弊社ダイバーが毎月のように潜って観察を続けてきましたが、この周辺の海底ではここ何年もの間コンブの着生が見られたことはないそうです。いったいどうやって現れたのでしょう。

 図1のコンブが見つかった場所は、図2に示す試験施設から約4mほど離れた位置にありました。試験施設は、単管でできた土台にコンブの種を付けたコンクリート板を取り付けたものです。

 


図2 試験施設にて成熟したコンブ(2021年11月)

 周辺には種の供給源となるようなコンブ群落はなくコンブは試験施設のみに存在したこと、海底に着生したコンブは試験施設の近傍にだけ見られたことから、図1のコンブは図2のコンブから種が出て海底に着生したものと推測されます。つまり、図1のコンブは、図2のコンブを親に持ち、親の親は2020年秋に函館に自生していたコンブ(図2のコンブの種付けに用いた母藻)ということになります。

 高谷(2020)によれば、コンブの種を付けたプレートを海底に設置した実験では、プレート上に着生したコンブが成熟し、翌年にプレートから直径5mの範囲の天然岩盤上に群落が形成されたとしており、今回紹介した事例でも結果の再現性が得られました。

 

参考文献
高谷義幸(2020) 磯焼け海域での小規模コンブ群落形成実験とその消長, 北水試だより, 101, 3-6.

ブルーカーボン、カーボンニュートラル、クレジット、磯焼け、藻場造成、藻場分布、核藻場、コンブ群落、コンブの種、水中ライブカメラ

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