長い長い、北海道の冬。今年はやや暖冬ではありましたが、それでも大雪の日があったり、当社のまわりでも-15℃を下回るような寒い日もありました。毎年のことながら今年も、厳しい冬が続いてきた後の今時期は、そろそろ新緑の森や花々の彩りが待ち遠しくなりますね。
さて、そんな春を彩る草花たちは、厳しく雪深い北海道の冬をどう過ごしているんだろう?なぜ春、早い時期に花を咲かせるの?と気になったことはありませんか?
今回のタイトル画像は、春に咲く花々でも最も開花が早いグループの花、フクジュソウ(左)とアキタブキ(ふきのとう、右)です。どちらも2023年の3月23日に当社のそばで撮影したものです。やや雪解けの早い年ではありましたが、気象庁のアメダス札幌地点での積雪量がゼロになったのは3月21日、わずか2日前のことで、森のなかはまだまだ雪が残っているような状況でした。
こうした花々の多くは、実は冬になる前に開花準備を終えています。フクジュソウは地表のすぐ下の地面の中に、アキタブキは地表のすぐ上にひょっこり飛び出すように。深い雪の中に蕾を準備してあるのです。雪が解けすぐに花を咲かせれば、他の花々はまだ咲いていない時期、蜜や花粉を求める虫たちを独り占めして、思う存分受粉の手伝いをしてもらえる、というわけです。
ハナアブを集めるフクジュソウ(2023年3月 恵庭市)
花が終われば種子づくり、つまり子育ての時期。森の屋根のような落葉広葉樹たちはまだ葉を開く前で、森の中までやわらかい春の光が届くうちに葉を出し、存分に光合成して種子へ栄養を送ります。夏になる前に種子を飛ばし終えれば、あとはのんびり次の春に向け根系や芽、蕾などへ養分を蓄えた後、葉を落とし冬に向けお休みします。
このサイクルが極端で面白い植物に、ナニワズという落葉低木があります。森の日陰が一番濃い真夏は葉を落とし、枝と実だけになってしまうのです。それで別名「ナツボウズ」とも言います。その後、植物は多くがお休みに入る秋頃に新葉を出して、雪中でも青々した葉と蕾を枝先につけたまま、雪の中で冬を越します。これなら木々の落葉後から開葉前まで、森の中に光が届く時期を最大限に活かせる、夏の暑い時期は苦手だし休んでおこう、ということなのでしょうか?生まれも育ちも北海道な私も夏が大の苦手ですが、このぐらいハッキリしていると気持ちがいいですね。
雪中でのナニワズの葉と蕾(2023年12月 苫小牧市)
また、春を待ちきれず、自分で雪を解かして咲く、攻撃的(?)な植物もいます。ザゼンソウは、開花準備にかかるとミトコンドリアの働きで呼吸の速度を上げ、自ら20℃くらいまで発熱して、雪を割り解かし開花します1)。
まだ寒い早春の時期に飛び交う虫たちは、発熱して暖かいザゼンソウの花へと誘われてしまうわけですね。
雪面から出たザゼンソウの蕾(2023年3月 江別市)
植物たちは長い冬も、ただ寒いから、と縮こまっているわけではなく、それぞれの方法で自然の仕組みを活かしながら、春を待ちわびています。私達もこうした姿勢を見習うべきかもしれません。