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2024年04月25日

藻場通信 vol.40 2024年春のニシンの群来

自然環境部 海域担当チーム
田村 勝

 今回は北海道日本海沿岸の神恵内村で2024年春に起こったニシンの「群来(くき)」にまつわる話題をご紹介します。群来は、産卵・放精により海面が白く染まる現象のことを言います。神恵内村で群来が起こったのは実に70年ぶりとのことで、水中撮影した画像をエコニュース号外で紹介しておりますので、そちらもぜひご覧ください。

 近年、北海道日本海沿岸の各地で群来の報告が増えていますが、その背景にあるのがニシンの種苗放流事業と言えるでしょう。後志総合振興局管内水産統計資料1) によれば、後志管内では記録のある平成17年度~令和3年度に、小樽、余市、古平、積丹(美国)、積丹(積丹)、南後志の各地区の合計で26~89万尾が毎年放流されています。資源の回復に寄与していることは言うまでもなく、地域関係者の方々のご尽力の賜物と敬意を表します。

 一方、神恵内村では長年にわたって藻場造成に取り組んでこられ、今回の群来との直接的な関係は分かりませんが、今後さらなる藻場造成の機運が高まることが期待されます。今回の群来によって、ニシンそのものを増やす種苗放流はもちろん重要ですが、産卵のための藻場環境を整備することもやはり重要で、これらを組み合わせて行うことでニシンの資源回復に対しより効果が期待できるのではないかと感じました。

 ところで、弊社が主に藻場造成に取り組んでいるコンブですが、ニシンの産卵に必ずしも適しているわけではないようです。赤池ら2)は留萌沿岸で海藻の種類ごとにニシンの卵数を調べ、海草類のスガモ、ホンダワラ類のフシスジモク、スギモクで卵数が多かったとしています 。干川ら3)は厚田村沿岸で同様の調査を行い、スガモで卵数が多かったとしています。スガモ場はVol.39にもあるとおり、CO2の吸収計数が高いことでも知られています。

 今回は上記以外にも多種多様な海藻に産卵が見られました。今後は目的に応じて多様な藻場をつくることも課題であり、ひきつづき藻場造成に励んで参りたいと思います。

参考資料

1)後志総合振興局管内水産統計資料
https://www.shiribeshi.pref.hokkaido.lg.jp/ss/sis/toukeisiryou.html

2)赤池章一・多田匡秀・瀧谷明朗・今井義弘・名畑進一・吉村圭三・清河進・水野勝彦・河井渉(2002) 北海道留萌沿岸で観察されたニシン産卵床の特徴. 北海道立水産試験場研究報告, 62号, 92-103.

3)干川裕・田嶋健一郎・川井唯史(2002) ニシン産卵床の形成に及ぼす植生と地形の影響. 北海道立水産試験場研究報告, 62号, 105-111.

 

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