北海道は一面雪景色となり、海水もすっかり冷たくなってきました。環境事業部では冬も変わらずに多くの潜水業務をこなしています。海の中では日々様々な出会いと発見があり、今回はその一例をご紹介します。
背景が透けて見えるほど透明でゼラチン質のこの浮遊物体。見た目はクラゲに似ていますが、触ると少し硬く弾力のある感じです。単体でいる事もあれば連なってヘビの様に浮遊している事もあり、遭遇するとずっと眺めていたくなる不思議なオーラを放っています。
この不思議な物体、海中の植物プランクトンを食べては糞をし、繁殖までするれっきとした生命体です。神経系だって持っています。その名は…“サルパ”。
クラゲは触手に毒を持ち、主に動物プランクトンを食べる肉食系に対し、“サルパ”は無毒で植物プランクトンを食べる草食系で、全国に30種類ほどいます。“サルパ”は私たち“ヒト”と同じく神経系を有する脊索動物の仲間で、ホヤと同じグループである尾索動物亜門に分類され…要するにホヤの仲間です。
とても神秘的で美しい生命体ではありますが、海中のプランクトンが多くなると大量発生し、海中に設置している網に付着して目詰まりさせる事もある為、漁師さんが頭を悩ませる原因ともなっています。しかしこの草食系の“サルパ”、地球温暖化を解決する救世主だと囁かれているんです。
地球温暖化の原因は大気中の二酸化炭素ですが、海中の植物プランクトンは、この二酸化炭素を取り込んで成長します。そしてこのプランクトンを餌として食べる“サルパ”は、糞や死骸として炭素を海底へと運搬しています。“サルパ”によって海底へと運搬される炭素は大気中へ戻ることはない為、「大気中の二酸化炭素増大=地球温暖化」を防ぐ役割を担っているというわけです。見た目だけではなく、その存在意義までも魅力たっぷりな“サルパ”、海で見かけたら感謝の意を持って優しく見守ってあげて下さい。
○最後に
今回の撮影場所は北海道積丹半島に位置する神恵内村の沿岸海域です。神々しい村名のイメージ通り、豊かな自然・きれいな海・温泉・もちろん美味しい海産物もあります。海に沈む夕日を見ながら温泉につかり、“サルパ”に想いを馳せながら新鮮な海産物に舌鼓をうつ休日なんていかがでしょうか?札幌からは車で3時間ほど、ぜひ足を運んでみて下さい。