私はエコニクスで植物調査を担当しています。植物調査に従事しているということは、ある意味オタクです。
植物にまつわる事は日常的に目に止まるものです。昨年暮れ、たまたま通りかかった百円均一の店先で松笠(松ぼっくり)が目にとまりました。クリスマス飾りの季節コーナーです。
クリスマスの飾りに1.5センチくらいの小さな松笠がつけられていました。「おおっ、これはグイマツの松笠ではないか」と、我々植物調査従事者でもなかなか目にしないものをここで使うとは、と感心しました。小ぶりの松笠なら確かにうってつけだったので、「エライ!」と着目点を評価しました。その後、どうして適度な大きさであるグイマツの松笠を使う事になったのか、どこからこれを集めたのか。また、どこで作られたものなのか、といろいろと疑問点がでてきました。
グイマツは北海道には自生しません。グイマツの仲間のカラマツは北海道ではよく植林されていますが、野ネズミに食われてしまうという問題があります。そこで野鼠害に強いグイマツとカラマツの交配種をつくればよいのではないかと昔の人は考え、両種の交配種が植林されるようになりました。
グイマツはカラマツからすると何分の一かの小さな松笠をたくさんつけます。交配種の中にはこの小さな松笠をつけるものも多いです。仕事で訪れた稚内地方では小さな松笠を見かけることも多かったです。ただ、この小さな松笠を日本で集めるのはなかなか難しいことなので、当然国外での生産かと思いパッケージの裏面を見ました。商品の裏の表示は国外での生産ではなく、大阪の会社が書いてありました。日本製という事だろうか?それとも販売元という意味なのだろうかと疑問に思いました。日本製であっても百円均一なのだから、これを集めさせて加工場に送っていては輸送費がかかります。そんなの仕事にならないなぁと思い、日本のどこかの片隅でおばさんが「一日1000個はつくらないと仕事にならないのよ」なんて言うのかなぁといろいろと想像が働きます。
百円均一の飾り一つでそこまで考える人もいる、というお話でした。
これを書くにあたって、もう一度松笠を見直してみると、どうもこれは針葉樹のツガの仲間ではないかと思い始めました。「中国にもツガの分布はあったかな?チベットの方だよね?」となると気になるもので、ではどの図鑑で確かめればよいのか、物流はどうなっているのかなどなど想いをめぐらしている松笠オタクなのでした。