エコニクスの本社は、IT企業が立ち並ぶ「札幌テクノパーク」という工業団地の一画に立地しています。テクノパークへ向かう途中には札幌市の雪堆積場があり、冬季には市内で除雪された雪が積み上げられ、ちょっとした高さの山ができあがります。この雪山は春から徐々にとけていき、初夏には雪山の跡地が浅い池となって、トンボやカエルなど水生生物の恰好の棲み家になります。
先日、知人とこの池に自然観察に出かけた時のことです。泥の中に細長いものが動いているのが見えたので、網ですくってのぞいてみると…なんとオレンジ色のドジョウがいるではありませんか!
調べてみますと、この個体は眼が黒かったことから、先天的にメラニン色素が欠乏した「アルビノ」ではなく、色素変異個体だということがわかりました。ドジョウの表面には黒色と黄色の色素胞があり、黒色素胞が少ない個体がこのような鮮やかなオレンジ色になり、「ヒドジョウ(緋泥鰌)」と呼ばれているとのことでした。
私は知らなかったのですが、このオレンジ色のドジョウ、現在は人工繁殖によって観賞魚として広く流通しているようです。観賞魚店などに行けば比較的簡単に入手することは可能とのことです。
とはいえ、野外ではこのような天敵に襲われやすい色をしたものが生き残ることは難しく、この個体はなかなかの強運の持ち主と言えるのではないでしょうか。
そう思うと、このドジョウ君が何だかありがたいような、幸運を招いてくれるような気がしてきて、思わずそっと拝んでしまいました。
奇しくも採集日は自分の誕生日。厄年真っただ中な私ですが、ドジョウパワーで厄を吹き飛ばし、業務に邁進して参りたいと思います。
以上、会社の近所でドジョウすくいをした社員の小話でした。
※補足※
ドジョウは北海道において在来種説と本州からの外来種説に見解が分かれていますが、先住民のアイヌ語にドジョウに該当する用語が見あたらないこと、稲作の伝搬時あるいは内水面漁業用に導入されたと考えられていることから国内外来種とされ、北海道ブルーリスト2010ではカテゴリーBに区分されています。ただ、最新の図鑑情報では、国内外来である「ドジョウ Misgurnus anguillicaudatus」と在来である「キタドジョウ Misgurnus sp. (Clade A)」がいるとされていますので、在来種の可能性もあります。
<参考図書>
河野光久・國森拓也・齋藤義之(2017)『山口県日本海沿岸域で漁獲されたイサキ,カタクチイワシ及びヤマトカマスの黄変個体』山口県水産研究センター研究報告 (14)、pp59-61.
中川雅博・中島淳・浅香智也・鈴木誉士(2008)『琵琶湖につながる農業用水路で採集されたシマドジョウの黄変個体』ホシザキグリーン財団研究報告 第11号、pp287-289.
日本魚類学会(2014)『シリーズ・日本の希少魚類の現状と課題:ニホンウナギ・ドジョウ』魚類学雑誌 61(1)、pp36-40.
中島 淳・内山 りゅう(2017)『LOACHES OF JAPAN Natural History and Culture 日本のドジョウ 形態・生態・文化と図鑑』山と渓谷社.
<参考HP>
“ドジョウ”.Wikipedia.
<https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%89%E3%82%B8%E3%83%A7%E3%82%A6>
“ドジョウ”.北海道ブルーリスト2010 北海道外来種データベース.
<http://bluelist.ies.hro.or.jp/db/detail.php?k=05&cd=40>