すっかり秋が深まり、色鮮やかな紅葉が山を彩る季節になりました。秋を感じるもの、といえばやはり紅葉ですが、それよりも早い時期、赤トンボが集団で飛行する姿を見ると夏が終わり、秋が来たのだという気持ちになります。
9月の初めごろ、藻岩山近くの川で、周りの赤トンボとは明らかに違うトンボが飛んでいることに気づきました。あたりでたくさん飛んでいる赤トンボと比べ一回り小さく、羽に褐色の模様と赤い部分があり、一際鮮やかな赤色のトンボでした。調べてみると、札幌近辺でもっともよくみられるアキアカネではなく、ミヤマアカネという種類のトンボでした。
名前に「ミヤマ(深山)」とつくものの、里山の麓のほうがよくみられる種類で、私が見つけた場所も市街地を流れる川のほとりでした。しかし、東京や大阪周辺などでは絶滅が危惧されているそうです。都会では減少傾向の動物が住宅地のそばでもごく普通に見られるということは、都市部でも自然がたくさん残っている札幌らしいといえるかもしれません。また、余談ですが有名な童謡「赤とんぼ」の歌詞も北海道のトンボがモデルとなっているといわれます。作詞家の三木露風が北斗市のトラピスト修道院で執筆したもので、種類はアキアカネをモデルにしているとの説が有力らしいです。今回紹介したミヤマアカネではありませんが、北海道と赤トンボというのも縁があるのではないでしょうか。
9月の半ばまではたくさん飛翔していて、私の目を楽しませてくれていたのですが、下旬にもなるとアキアカネはたくさんいるにも関わらず、ミヤマアカネは一足早くいなくなってしまいました。こんな些細なことなのですが、赤トンボで季節の移り変わりを感じた年でした。
<参考文献>
新井裕(2007)赤とんぼの謎.172pp,どうぶつ社,東京.
杉村光俊・石田昇三・小島圭三・石田勝義・青木典司(1998)原色日本トンボ幼虫・成虫大図鑑.956pp,北海道大学図書刊行会,札幌.
“日本のレッドデータ 検索システム”.NPO法人 野生生物調査協会・NPO法人 Envision環境保全事務所.
< http://jpnrdb.com/index.html >