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2019年05月30日

エレキギターのお話です②

 前回の記事でエレキギターに使用されている木材の話をしましたが、とくに注目したいのが下記の木材です。

マホガニー

センダン科マホガニー属に属す木の総称

一部はワシントン条約の附属書Ⅱに登録

ローズウッド

紫檀とも。マメ科ツルサイカチ属に属す木の総称

全種がワシントン条約の附属書ⅡもしくはⅠに登録

 

 エレキギターの製作に使用される木材の中には、希少になりつつある木材が含まれています。

 上記にある、ワシントン条約の付属書Ⅰに掲載された種は絶滅のおそれがあり、商業目的の国際取引が制限されています。また、付属書Ⅱに掲載された種は絶滅のおそれがないものの、違法な採取や取引を規制するために輸出入に規制が掛かっています。

 規制前に取引されていた木材は対象外でしたが、2016年の改正(2017年1月2日発効)により、材となる植物だけでなく、それらの加工品や製品も規制対象となることが明記されました。

 今現在は規制前に取引されていた木材がありますし、国内の取引は規制外となりますが、原木の輸出入が規制されることで将来的に希少な木材を使用しているエレキギターは減っていくかも知れません。製作に掛かる手間暇を減らすため、同じモデルであっても仕様が異なるギターに切り替わっていく可能性があるからです。

 

 例えば、ギブソン社が1958年に発表した「フライングV」と呼ばれるモデルがあります。ギターに詳しくない方でも、V字型の形状のギターを目にしたことはあるのではないでしょうか。

 発表当初、フライングVはボディ材にコリーナ(リンバウッド)を使用していました。しかし、当時はあまりにもデザインが先進的過ぎたため、ほとんど売れることなくわずか2年で生産を停止。生産数は98本だったとされています。その後、時代が追い付く形でこのモデルが再び脚光を浴びて再販されましたが、再販モデルではコリーナが使用されず、ボディ材はアルダーに改められました。この仕様変更により、オリジナル・モデルはコレクターズ・アイテムとして高値で取引されるようになりました。

 もちろん、木材の輸出入規制がそのままエレキギターの希少性や価格高騰につながる訳ではありませんが、仕様変更によって同じような影響が出てくるかも知れません。

 

リンバウッド

アフリカに産するシクンシ科の広葉樹Terminalia superba

この樹種自体が希少という訳ではありません

 

 有名かつ非常に高額な楽器と言えばヴァイオリンのストラディバリウスが有名でしょう。現存数は600挺ほどと言われていますので、数からみた希少性となると上記のエレキギターの方が上かも知れません。「いやいや工場製品と工芸品は比べる意味がない」という意見もあるかも知れませんが、エレキギターだって職人が生み出した製品です。生産数が減ったり、他にない仕様だったり、職人の技が廃れたりすれば、いずれ希少なものとなります。

 それに、ストラディバリウスを作った3親子が20世紀後半に生きていたら、おそらく時代の流れに乗ってエレキギターを作っていたのではないでしょうか。同様に、シェイクスピアが生きていたら映画を撮影していただろうし、紫式部が生きていたらメディアミックス作品を書いていただろうと、私は推測します。

 

 いつの日かエレキギターがストラディバリウスより高値になる日が来るかもしれない。

 あるいは、今聴いているギターの音が失われる日が来るかもしれない。

 だからこそ、誰かがエレキギターを弾くとき、その音に耳を立てると共に、その手に握られているギターの美しさにも注目していただきたいと思います。

 

FBPO

 

 

 

◯社内の有志より手持ちのエレクトリックベースの写真を提供いただきました。

 フェンダー社がデザインして日本のフジゲン社がハートフィールドのブランド名で発表した6弦ベースDR-6
 ボディとネックが一体化しているモデルです
 ボディとネックはおそらくメイプルとアルダーを合わせたもの
 指板はローズウッド

 

 日本のムーンギターズ社が1989年に発表した5弦ベースJJ-5
 こちらはT-SQUAREのベーシスト須藤満さんのシグネチャーモデルだそうです
 ボディはアルダー、ネックはメイプル、指板はエボニー

 

 

<参考HP>

世界の銘木 木材図鑑.http://wp1.fuchu.jp/~kagu/mokuzai/index.htm
ムーンギターズ社ホームページ.http://www.moon-guitar.co.jp/
“ワシントン条約(CITES)”.経済産業省.
http://www.meti.go.jp/policy/external_economy/trade_control/02_exandim/06_washington/index.html
“絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約”.Wikipedia.https://ja.wikipedia.org/wiki/
“ストラディバリウス” Wikipedia.https://ja.wikipedia.org/wiki/
キャンプ・ファイア(2000)「ウーピーズ・ギター 世界のギター名選50」東京書籍

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