私はエレキギターに触れたことがないエレキギター好きです。
「いやいや、好きなら弾けばいいのでは?」という声が聞こえてきそうですが、私の周りで「日本刀が好きでいつも振りまわしています」というヒトは見たことがありません。
そういった「日本刀が好き」という方と同じくらい「エレキギターが好き」という訳です。
「エレキ」と聞くといかにも電子機器のようなイメージがありますが、ご存じのとおりエレキギターの本体(ボディ)は基本的に木製です。エレキギターが発する音の大半は、電子部品や周辺機器により決定されますが、使用されている木材によってわずかに音質が異なると言われています。
一般に使用されている木材は下記のとおりです。
アルダー |
太平洋の北西海岸やヨーロッパに産するカバノキ科ハンノキ属の広葉樹 |
アッシュ |
北米に産するモクセイ科トネリコ属の広葉樹 |
メイプル |
カナダとアメリカ北東部に産するカエデ科カエデ属の広葉樹 |
マホガニー |
センダン科マホガニー属に属す木の総称 一部はワシントン条約の附属書Ⅱに登録 |
ウォルナット |
いわゆるクルミのこと |
また、指を当てる部分(指板)には、下記のような木材が使用されます。
ローズウッド |
紫檀とも呼ばれます。マメ科ツルサイカチ属に属す木の総称 全種がワシントン条約の附属書ⅡもしくはⅠに登録 |
エボニー |
黒檀とも呼ばれます。南アジアやアフリカに産するカキノキ科カキノキ属の熱帯性常緑高木 |
これらの木材は家具の製作などにも使用されます。木材の産地はそれぞれ異なるため、異なる地域に生育する複数の木からひとつの楽器が作られているパターンも多々あります。
例えば、フェンダー社が1951年に発表した世界初のエレクトリックベース「プレシジョンベース」の場合、ボディはアルダー、ネックはメイプル、指板はローズウッドでした。もしかしたら、ヨーロッパで生まれたアルダー、北米で生まれたメイプル、アフリカで生まれたローズウッドが使われていたのかも知れません。
木材の輸出入が世界中で行われている現在であれば当然のことですが、その昔の弦楽器はその地域に生育していた木から作られていたと思います。異なる地域の産物が巡り合ってひとつの楽器となり得たことは、文化の発展・交流から生まれたひとつのドラマではないでしょうか。
もちろんそれだけではなく、エレキギターの重要なパーツとなる弦やピックアップ(弦の振動を電気信号に変換する部品)ができるまでに、多くの職人の試行錯誤があったと思います。わずか一音であっても、そのギターの音が生まれるまでに、木材の成長と木材としての収穫があり、職人と奏者の努力、そしてギターを使用してきた人たちの愛情が注がれている訳です。
そう考えると、著名なアーティストだけでなく、ギターを趣味にして弾いている一般の人、そのギターから発する音の全てにドラマがあると思えてきませんか?
誰かがエレキギターを弾くとき、その音に耳を立てると共に、その手に握られているギターの美しさにも注目していただきたいと思います。
この話、続きます。
FBPO
◯社内の有志より手持ちのエレキギターの写真を提供いただきました。
フェンダー社が1950年に発表したテレキャスターと呼ばれるモデル
世界初のソリッドボディ・エレキギターで現在も販売されています
ボディのシリアル番号を見ると88年もしくは89年のモデルのようです
ボディはアッシュ、ネックと指板はおそらくメイプル
フェンダー社が1954年に発表したストラトキャスターと呼ばれるモデル
王道中の王道と呼ばれる人気モデルです
ボディのシリアル番号を見ると93年もしくは94年のモデルのようです
ボディはアルダー、ネックはメイプル、指板はローズウッド
<参考HP>
世界の銘木 木材図鑑.http://wp1.fuchu.jp/~kagu/mokuzai/index.htm
フェンダー社ホームページ.https://shop.fender.com/ja-JP/start
“マホガニー” Wikipedia.https://ja.wikipedia.org/wiki/
“ローズウッド(木材)” Wikipedia.https://ja.wikipedia.org/wiki/
“フェンダー・プレシジョンベース” Wikipedia.https://ja.wikipedia.org/wiki/
“絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約”.Wikipedia.https://ja.wikipedia.org/wiki/
キャンプ・ファイア(2000)「ウーピーズ・ギター 世界のギター名選50」東京書籍