建築シリーズ Part1
株式会社エコニクス
環境事業部 施設設計チーム 斎藤 繁幸
始めに、「建築物の安全の確保を図るための建築基準法の一部改正する法律」が平成18年6月21日に交付されましたが、この法律は、耐震強度偽装問題の再発防止、建築物の安全性確保を図り、安心して建築物の取得・利用出来る様に制度の見直しのために公布されたもので、公布後1年以内に施行されます。
主な改正内容として特に重要な事項は、次の3項目です。
① 建築確認申請時に構造計算書を指定構造計算適合性判断機関で専門家による審査(ピアチェック)を行う
② 3階以上の共同住宅は中間検査が義務づけられる
③ 建築基準法に違反した場合、特に耐震基準などの重大違反に対しては罰則を強化する
この改正により不正防止に対する環境整備は整いつつあるので、建築士の信頼回復に期待するところであります。
ただ、上記法改正により未然に防止するのはもとより、万が一被害に遭ったときに有効に機能する被害補償制度など、被害者を保護する制度制定も急がれるところであります。
さて、本題にはいりまして、環境に優しい建物の換気方法として、「パッシブ換気システム」という方式を最近多く耳にします。この方式は、冬期間の冷たい外気空気を直接室内に入れるのではなく、最初に自然換気により(冷たい空気は重いので)床下に入れ、床下空間を利用して外気を地熱+暖房器具を利用して加温後、床下の換気口より上昇気流により室内に吹出し室内を循環させ建物全体を暖房します。また、不用になった空気は屋根上部の排気口より上昇気流により自然排気されます。 さらに、床下暖房の熱源として、ソ-ラーシステムを利用すると環境により良い暖房換気システムとなります。
また、現在注目されている環境負荷の少ない冷房方法として、一部の建物で実験的に行われていますのが、冬期間大量の積雪を地下保管庫に夏まで保管し、夏期間に保管庫内の冷気を熱交換機により室内の冷房として使用するものがあります。北海道の「積雪」という、今まで利用できなかった自然資源を有効活用することが出来れば非常に有意義であります。
近年、我が国の住宅建設コストが先進諸外国の中でもとりわけ高いと言われており、その低減に対する社会的要請が高まっています。ここで、北海道においては、寒冷な気候条件のため、地盤凍結による住宅被害の危険性が本州よりも高く、このような被害を防ぐため、建物基礎を地盤凍結深度(50~120cm)よりも深くしています。
上記理由より、北海道では本州よりさらに高額な基礎工事費が必要になり総工事費が上昇する要因になっています。そこでここでは、工事費低減方法の一つとして「スカート断熱工法」を紹介します。
木造住宅などは断熱効率の良い、外壁外断熱工法が多く、基礎部分外断熱部分において、建物外周の地盤中に水平断熱材を施す「スカート断熱工法」を行うことにより地盤凍結深度を途中で止め、基礎を凍結深度以下まで施工する必要が無くなり、地域によるが基礎工事費の10~50%程度の低減が可能となります(したがって、凍結深度が深い地域ほど、効果が大きい)。
参考までに、住宅などの低層建築物などは、建物の南側に落葉樹・北西側に常緑樹を植える事により夏期間は葉により太陽光を和らげ涼しくし、冬期間は常緑樹により季節風を防ぎながら落葉により太陽光が建物内部を照らして暖かくすることができます。自然をうまく利用して、経済面や景観面(癒し)を発揮させ、心地よく居住するための良い方法であると思います。これからの住宅において太陽光利用による蓄熱暖房、建物屋上の庭園化による断熱効果・ヒートアイランド現象防止など自然環境に配慮した、しかも自然を有効利用するといったことが必要ではないでしょうか。