水産・環境シリーズ Part1・海外編 その1
株式会社エコニクス
取締役技術顧問 川村 一廣
1997年は日チ修好100周年でチリの大統領が日本を訪問したり、常陸宮殿下ご夫婦がチリを訪問したり色々な行事がありました。日本とチリは赤道を挟んで太平洋の対角線の先端にあり、非常に遠く離れていますが、共に長い沿岸線を持ち、その200カイリ水域は世界有数の生産力の高い漁場に恵まれています(日本は最近では700万トンを維持しており、中国、ペルーに次いで第4位にあります)。
チリは南緯17°30'から南緯57°まで全長4,300・におよぶ海岸線を持ち、その沖合い全域にわたってフンボルト海流などの強い海流が流れています。南緯40°以北では海岸線が単調で、急傾斜で水深が深くなり大陸棚が狭くなっているのに対し、南部ではチリ最大の島チロエ島からマゼラン海峡まで、多数の島とフィヨルドによって、複雑な海岸地形になっています。水温は夏でも20℃を越える海域は少なく、また、年較差が10℃以下のところが多く季節変化が小さいです。総漁獲量は、1970年代は120万トン位であったのが、1980年260万トン、1985年500万トン、1994年802万トンと急成長を続けてきました。1996年には、723万トンで、このうち魚類がアジ、マイワシ、カタクチイワシなどの浮魚を中心に93%を占めています。この10年間では、アジが増加し、マイワシの減少が著しく日本と同じような傾向にあります。メルルーサなどの底魚類の漁獲量は年々低下してきています。1990年代に入り貝類の漁獲量の低下が目立っており、1996年には10万トンを切ってしまっています。海藻類の生産はオゴノリを主体に1996年には32万トンまで増加しています。甲殻類の生産は1990年以降25~30万トンで安定しています。
チリ政府は1991年9月9日に新漁業法を公布し、水産資源の開発状態について1)完全開発済みの段階、2)回復期の段階、3)初期開発の段階と区分し、特に1)の場合には、企業漁業者に対して様々な規制をしています。また、主な底棲生物資源についても、漁獲サイズ制限、禁漁期等を設定して資源の保護を図っています。