<海の生物シリーズ Part18・ベッコウヒザラガイ>
株式会社エコニクス
環境事業部 泊担当チーム 大坂 健嗣
貝塚という言葉はどこかで耳にしたことがあるかと思います。貝塚は古代人類のゴミ捨て場と考えられているのが一般的であり、世界中のあちこちで土器や石器、動物の骨などと一緒に貝殻も発見されています。
貝塚で貝が発見されたということで、貝は縄文時代から人類の食料であったことや、日用品として皿や蓋などに使われていたのではないかと考えられています。
そんな大昔から存在していた貝ですが、現在でも貝類は動物学上軟体動物門の大部分で、世界中に現存する種類は100,000ほどあるといわれ、日本の領域では6,000近い種があるといわれています。
そんな多くの種の中で今回紹介する貝はベッコウガサガイとヨメガカサガイです。ベッコウガサガイもヨメガカサガイもツタノハガイ科に属し、北海道西部の潮間帯の岩礁に広く分布しています。ベッコウガサガイやヨメガカサガイは原始腹足類といわれ、肉眼では確認できない歯舌(舌の上にたくさんの歯があるようなイメージ)を使い、岩礁上の微小な藻類を削りとるようにして食べています。しかも、この歯舌(しぜつ)は使っているうちにどんどん減っていくのですが、のどの奥から口に向かってひらく歯舌嚢(しぜつのう)と呼ばれる器官から新たに形成されていきます。
下に示したのは北海道西部の潮間帯で採集したベッコウガサガイの貝殻です。
私の初見では「なんて地味な貝殻なんだ…」と思っておりましたが、いざこれをひっくり返してみると…
このような美しいべっこう飴のような色になっています。
下に示してある写真は同じ場所で採集した貝でヨメガカサガイです。
このヨメガカサガイは海の中で見てもベッコウガサガイの形状とよく似ています。これもひっくり返してみると…。
写真ではわかりづらいのですが、貝の内側は銀色のような光沢があり、触った感じではベッコウガサガイよりも殻が薄くなっています。
水中ではベッコウガサガイもヨメガカサガイも形状だけで見分けることが難しいのですが、この二つを横から見てみると…
ベッコウガサガイ(左)は殻高が高く、ヨメガカサガイ(右)は殻高が低いことがわかり、両者を判別することができます。上から見ても横から見ても人間の手では作り出せないような曲線美を描いています。
他にも多くの種類の貝がありますが、貝は昔から道具や装身具、貨幣、宗教の対象物などとして幅広く親しまれている生物です。その様々な模様、形の美しさ、豊富な種類などの魅力的な要素を多く含んでいるため、自然と人の関心を引くようになったと私は考えています。
今回は日本海に生息する二つの貝を紹介させていただきましたが、もちろん、陸上でも皆さんの身近に多くの貝が生息しています。それらは私たちが生まれるずっと以前から地域の環境に合わせて進化を繰り返し、現在に至っている生物です。これから梅雨時期を迎え、外に出る機会があるときにはアジサイの上を這うマイマイを見て、少しでも貝の歴史や美しさを感じてみてはいかがでしょうか。