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エコニュースVol.193

2009年07月01日

<化学分析シリーズ Part2・水道水 その1>

水道水ができるまで

株式会社エコニクス
環境技術研究所 試験分析チーム 高橋 かおり

 最初に、急速濾過方式により水道水ができるまでの工程をご紹介します。
まず基本的には、河川水を原水として、不純物の除去や消毒を行ったのち、各家庭に水道水として供給されます。


図 急速濾過方式による水道水の供給

着水井 :葉っぱなどの大きなゴミを取り除きます。
混和池 :小さなごみを集めて大きなゴミにするための凝集剤である薬品①を注入します。
フロック形成池:混和池から溢れてきた水をゆっくりとかき混ぜます。ゴミを取り除きやすいように、小さなゴミを集めて大きなゴミにします。
沈澱池 :大きくなったゴミを沈澱させて取り除きます。
濾過池 :砂で濾過することにより、沈澱池で取り除けなかった小さなゴミを取り除きます。
浄水池 :消毒のために薬品②を注入します。
配水池 :各家庭等に配水するため、各家庭よりも高い場所にあり、高低差を利用し配水されます。高低差が小さな場所では、ポンプにより圧力を加えて配水されます。

 急速濾過方式で効率よくゴミを除くのに薬品①が注入されていますが、寒冷地においては水温が低くゴミの塊を大きくしにくいため、暖かい地方に比べて多くの薬品①を必要とします。
 しかし、薬品①にはアルミが含まれているため、ここで多量に注入してしまうと浄水に含まれるアルミが高くなってしまいます。そのため、原水の水質を把握したうえで薬品注入量の調整やpHの調整をすることが日常管理において大切なポイントとなります。
 薬品②は消毒のために注入される薬品で、塩素を主成分とするものです。この薬品は保管状況によっては酸化が進み、塩素酸という人体に害を及ぼす物質を多く含んでしまうことがあり、特に高温下での長期保存によっては顕著となる傾向があります。
 塩素酸は、赤血球への酸化ダメージを与えると考えられていますので、この薬品の保管状況や薬品自体の塩素酸濃度・有効塩素濃度が安全な水道水をつくるうえで十分なものであることが重要となります。
 エコニクスでは、原水、処理過程の水、供給される水のそれぞれについて、水温、pH、金属など14項目の水質検査を毎日行っております。その他にも河川水の農薬検査、薬品②が安全な水をつくる条件を満たしていることを確認する定期検査なども行っています。
 また、浄水場で作られた水が安全でも、各家庭に供給される途中で消毒副生成物として人体に害を及ぼす物質を含んでしまう可能性があるため、浄水場から遠く離れたところでも、水道水として安全性が確保されているか定期的に検査をしています。
 ここでは急速濾過方式という処理法式をご紹介しましたが、他にもいくつかの処理法式があります。消毒のみの方法、緩速濾過法、特殊浄水処理法や高度浄水処理法等、原水の水質により、いろいろな方式が採用されていますので皆さんの家に供給されている水をつくっている浄水場へ見学にいってみるのも楽しいかもしれません。
 人間の体に占める水分の割合は意外と高いのをご存知でしょうか。子供で約70%、大人で60~65%といわれます。水は命の源といっても過言ではないでしょう。
水道水は、河川水・地下水などの環境水から作られます。豊かな自然環境の下で私たちは生きています。安全で幸せに生きていける環境をずっと残していくために、環境保全に貢献する一人であるよう歩んでいきたいと思います。

消毒剤が水中の有機物やその他の不純物と反応し、意図しない形で発生され、毒性があるもの(代表的なもの:トリハロメタン、ハロ酢酸)。

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