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エコニュースVol.045

1997年03月01日

ヤリイカシリーズ Part3

春を告げる海中桜(かいちゅうざくら)

株式会社エコニクス
 企画設計部 斉藤 二郎

 北海道日本海沿岸を4~6月にかけて北上するヤリイカ群は、沿岸域の岩礁部にある棚や、転石の天井部分に産卵をします。通常、ヤリイカの産卵調査は、卵が産み付けられていそうな岩棚の奥、転石の隙間、もしくはブロックの裏側などを探索し、卵嚢(卵の房)を見つけることから始まります。そして、発見した産卵場所の位置や地形的、環境的特徴の調査結果は、資源増殖や産卵場整備を目指して人工的に設置するヤリイカ産卵礁の形態、環境、配置などについて検討を行うための基礎的な資料として活用します。

 さて、話は戻りますが、ヤリイカ卵嚢の探索は予め設定した調査海域内で、海底を這うようにして、薄暗い穴の中を一つずつ覗き込む作業を丹念に繰り返します。

 穴の中にはソイやガヤ(エゾメバル)、アブラコ(アイナメ)などの根魚が棲み付いている場合が多く、時に大ダコが奥のほうに陣取っていてこちらを睨みつけていたりします。「えっ、何ですって?どうせ捕まえて食べるんだろうって?残念ながら水の中のタコは大の苦手ですぐに逃げ出してくるんですよ・・・」。また、珍しいオオカミウオなども見かけることがあります。

 このように、穴の中はヤリイカの卵だけでなく様々な生き物にとっても安全で居心地の良い棲み家となっているようです。一概に彼らの対応は「なにしてるんだ!」もしくは「覗いちゃイヤ!」といった意味合いの視線を投げ返す様に感じます。「ちょっと邪魔するよ」と心中でつぶやきながら、ようやく穴の奥に純白に光り垂れ下がる卵嚢を発見した時は、一瞬、秘宝を探り当てたような感動を覚えることもあります。

 ヤリイカの卵は、長く厳しい冬を過ごしてきた北海道の海底に春を告げる、いわば海の中の桜の花といった風情が感じられる昨今です。

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