深層水シリーズ Part1・海洋深層水の特性
株式会社エコニクス
取締役顧問 川村 一廣
海は地球の表面の2/3を占め、平均水深は3,800mにも達しています。光はどんなにきれいな海でも、水深200m以上には到達しません。このため光合成による植物の一次生物生産は、海の極く表面でのみ行われています。暗黒の世界の海水をまとめて深層水といわれます。この深層水の重要な特性としては、下記のようなことが上げられます。
1)低温:表層の海水の水温は、夏に高く、冬に低い季節変動をしますが、水深が深くなる従って、水温は低下するとともに変動幅が小さくなります。例えば、奥尻海域の水深100mでは夏の水温で10℃以下、水深300mでは周年3℃以下で、1℃位しか変動しません。
2)豊富な栄養塩:光合成の行われる表層海水では、栄養塩の濃度が低いことが多く、特に北海道の日本海沿岸では、夏から秋にかけて非常に低くなります。ところが深層水では硝酸、燐酸、珪酸など栄養塩が周年豊富で、表層の数倍から数百倍の濃度になることもあります。世界の海には深層水が自然に表層に浮き上がっている湧昇域があります。ここでは生物生産が盛んで魚類の生産も多く、世界の湧昇域の面積は0.1%に過ぎませんが、50%以上の漁獲があるといわれています。
3)清浄性:水深が深くなるにつれて、有機物は少なくなり細菌数も減少します。水深300m以深では、浮遊幼生も見られず、深層水を汲み上げるパイプの内面には付着生物が全く付着しないといわれています。
4)再生産性:海水は深層水を含めて大循環しており、深層水は世界的には2000年位で一回りするものから、一地域では十数年で循環するものなどがあるといわれています。つまり、深層水はたえずゆっくりと再生産されており、その莫大な量とともに上手に活用すれば無限のクリーンな資源であるといえます。