海環境シリーズ Part2・海水の栄養塩(肥料)
株式会社エコニクス
参与 駒木 成
前号で述べた様な沿岸海域の漁場が、等深線とほぼ平行の海岸線沿いに形成されるような場合は、海岸線の長さを基準とした地先漁業の特徴を見る事が可能です。コンブ漁業中心の道内市町村について比較した資料によると、海岸線1km当たりのコンブ漁獲量(昭和58年)は、日本海南部ホソメコンブ漁場で最低(1.9t/km)です。これを1日とすると、日本海北部リシリコンブ漁場で7倍、津軽海峡マコンブ漁場(養殖を含む)で16倍弱、太平洋西部マコンブ漁場(養殖が主)で25倍、太平洋西部ミツイシコンブ漁場で20倍、太平洋東部ナガコンブ漁場で25倍以上となっています。この様な違いは、地先コンブ漁業形態、コンブ銘柄、漁場自体の海環境など、様々な地理的な違いに影響された結果です。その違いの一つとして、植物栄養素が考えられます。それは、海底定着の海藻類や海中浮遊の植物プランクトン・微生物にとって、生長制限因子の役割を果たすものだからです。
資料:北海道水産部栽培漁業課調べ 平成3年度北海道漁業白書
植物栄養素の代表的なもの、つまり、植物にとって不足や欠乏しがちな生体元素として重要なものに、陸では窒素・リン・カリウム塩という肥料があり、海では窒素・リン塩という栄養塩があります。ちなみに、海のカリウム塩は、カルシウム・マグネシウム・ケイ素などと共に、主要元素14種(海水1kg中に1mg以上)の一つなので不足の心配はありません。次に、海の窒素・リン化合物のうち、窒素は硝酸塩が主で他にアンモニア塩・亜硝酸塩・尿素などもあり、リンは陸と同様にリン酸塩が主です。窒素とリンの濃度は大きく変動しますが、海水1kg中に1mg未満の微量元素です。同じく微量元素で生体金属であるモリブデン・亜鉛・鉄・銅・マンガン・コバルトなどは、生体への至適濃度範囲が狭いので、その範囲を超えた場合は有毒に作用します。その他、ノリやコンブなどの人工培養では、微量活性物質としてビタミンB群などの有機栄養素が重視されています。