<CSRシリーズ Part2>
株式会社エコニクス 戦略推進室
大久保 晋治郎
みなさんは「生態系サービス」という言葉を聞いたことがあるでしょうか?平成27年版環境白書によりますと、
“人々が生態系から得ることのできる便益のことで、食料、水、木材、繊維、燃料などの「供給サービス」、気候の安定や水質の浄化などの「調整サービス」、レクリエーションや精神的な恩恵を与える「文化的サービス」、栄養塩の循環や土壌形成、光合成などの「基盤サービス」などがある。”
と説明されています。
これら生態系サービスは私たちの生活を支えているものですが、企業にとっても事業活動を継続していくうえで、無視できないものといえます。また、生態系サービスは環境保全活動と密接にかかわっており、とりわけ欧米諸国では株主や消費者からの企業の環境保全に対する活動に向けられる目が厳しく、十分に行われていないと判断されれば不買運動がおこるほど企業にとっては必須の取り組むべき項目になっています。さらに、最も大きなリスクは、資源を持続的に確保できない(すなわち生態系サービスを受けられなくなる)ことにより事業活動を継続できなくなることにあります。
具体的な例として飲料メーカーを挙げてみます。飲料メーカーでは製品を製造するために大量の水を使います。いわば水の供給サービスを自然生態系から受けているのですが、安全で安定的な十分な水の量を確保できなければ事業が成り立たなくなります。目先の利益にとらわれて水源となっている森や湿地の土地開発を行ってしまうと自然生態系のバランスが崩れて水源の涵養機能が奪われ、将来これまで受けてきた水の供給サービスを受けられなくなる恐れがあります。生態系サービスを考えるに当たっては、長期的な視点も必要なのです。
近年国内においても、これら生態系サービス機能に対する意識が高まりつつあり、生物多様性や持続可能な経営への取り組みの指針となりうるガイドライン(ISO14001など)もいくつか発行されています。企業が社会貢献活動の一環と位置付け、環境配慮への取り組みを行うことは、機運が高まりつつある状況を反映していると言えます。
各企業が取り組みを進める一方、生態系サービスの経済価値が様々な環境や条件に依存する為、一元的に評価することができないために、便益として実感しにくいことが課題として挙げられます。私たちが恩恵を受けている生態系サービスとは何か、それぞれの生活の中で考えてみることが生態系サービスを理解する第一歩になると思われます。
<参考文献>
環境省(2015)環境白書/循環型社会白書/生物多様性白書(平成27年版). 日経印刷株式会社,420.