<陸の生き物シリーズ Part23>
株式会社エコニクス 環境事業部
陸域環境チーム 高松 純奈
先日、苫小牧市の東にある鵡川河口で野鳥を観察していると、こんな看板を見つけました。「タンチョウが好きなあなたへ」と大きく書いてあり、タンチョウに近づく人がいたり、何か気になることがあれば「むかわタンチョウ見守り隊」まで連絡を、と書かれていました。
タンチョウは、日本の野鳥の中では最大級であり、全長は1m40cm、翼を拡げると2m40cmもあります。日本では7種類のツルが観察されていますが、国内で繁殖するのはタンチョウ1種類のみです。主に日高山脈以東の湿原に生息し、淡水魚類やカエルなどの小動物、水生植物の根などを食べます。
かつては全道に分布し、明治以前は東京付近まで渡る個体もいたそうです。明治期以降の開拓による生息地の減少や乱獲により、一時は絶滅寸前となり、1935年に天然記念物、1952年には特別天然記念物に指定されました。
その後、保護活動の成果により1959年頃から増え始め、現在では道内に1000羽以上が生息していますが、絶滅危惧2類に指定されています。
前述したように、タンチョウの生息は道東地方に集中し、生息環境が過密となってきているため、環境省では生息地の分散を進めています。これにより、近年は道北やオホーツク地方にも分布が広がっているようですが、ほとんどは冬場のエサを道東の給餌場に頼っているのが現状です。
畑を歩くタンチョウ(札内)
(平成27年9月29日 陸域環境チーム菊地撮影)
鵡川では2011年にペアのタンチョウが飛来し、その後2013年、2014年、2016年と繁殖し、ヒナが確認されています。人口が多い道央圏に初めて定着し、給餌に依存せずに暮らすむかわのタンチョウを守るため、これまでは目撃情報や写真を公開せず、そっと見守ってきたそうです。
しかし昨年、幼鳥がカメラマンに追い回されて行方不明になったことから、「そっと見守るだけでは守れないのではないか」と考え、マナー違反を防いで、生息環境を守るために「見守り隊」の結成に踏み切ったそうです。
環境調査中にも、鳥を追いかけまわしたり、むやみに近づいたりする心ないカメラマンを見かけることがあります。私たちは常に生き物の住処にお邪魔していることを心がけなければなりません。
今回の取り組みのように、生き物の生活をそっと見守って、適切な保全を行っていけば、タンチョウのような貴重な種がもっと身近になる日がくるかもしれません。
今後も、当社の社の使命にある「自然と人間が共生する生態社会において、調和ある環境保全と利用開発を事業とし、社会に貢献する」を目指し、より良い環境作りに取り組んでいきます。
<参考文献>
“むかわタンチョウ見守り隊発足 自然愛好者ら生息環境を守る”.苫小牧民報社.http://www.tomamin.co.jp/20160336760
“むかわタンチョウ見守り隊 啓発看板設置、活動本格化.http://www.tomamin.co.jp/20160639548
“タンチョウ保護の取り組み”.日本野鳥の会.http://www.wbsj.org/activity/conservation/endangered-species/gj_hogo/
河井大輔・川崎康弘・島田明英(2003)北海道野鳥図鑑.亜璃西社,札幌.