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エコニュースVol.286

2017年04月01日

<地球環境シリーズ Part11>

流氷観光 -紋別編-

株式会社エコニクス 専務
桑原 聡

■流氷は気まぐれ風まかせ

 去る平成29年2月4日、「日帰り紋別流氷観光ツアー」に妻と二人で参加してきました。今年、当地の「流氷初日」は1月26日(平年値:1月23日)、「接岸初日」は2月2日(平年値:2月6日)ということでしたので、流氷はやってきたばかりという状況でした。昨年実績で流氷体験率は38%ということですから、ツアー当日の気象・海象によっては流氷にお目にかかれないというスリル満点の1月2月3月限定「際物(キワモノ)観光商品」といえます。

 これは「発地型観光のリスク」を逆手に取った「着地型観光のヒント」になりそうな気がします。(紋別まで来て頂いたお客様を「手ぶらで帰すわけにはいかない」)

 

■間違っていた私の認識

 流氷は遠くアムール川で生まれた河川(淡水)氷が長い時間をかけてシベリア沿岸の豊富なお土産を携えてオホーツク沿岸にたどり着くというストーリーを何の疑いも無く信じておりました。実際は海水が凍る-1.8℃になるとサハリン北東部で海氷として発生し、東カラフト海流に乗ってやってくる外国産の流氷と1月下旬オホーツク沿岸が氷結温度になると凍り始める純国産の海氷や河川氷とのミックス氷であることが待合所にある観光パンフに書かれていました。(詳細は本誌Vol.031~033を参照)

 

■流氷砕氷船ガリンコ号Ⅱによる航海

 13:30発第4便は定刻通り岸壁を離れ、当日の風向が西北西のために少し沖に移動していた流氷を追って出港しました。航海すること20分で流氷原に到着、乗船客はお目当てを間近にしてボルテージは最高潮。かく申す私もカメラを手に完全防寒で暖かい船室から寒風吹きすさぶ甲板へ撮影場所を風下舷(リーサイド)に確保するために移動しました。おかげ様で衣服もカメラも海水飛沫から逃れることができ、海鷲や海獣類の姿はありませんでしたが、流氷を砕いて進む感動的なシーンを観ることができました。

 

 
いよいよ「氷海航行」に入るガリンコ号Ⅱ。流氷原を砕氷しつつ航行します。

 

■地球温暖化と流氷の消失

 オホーツク海の流氷は地球の平均気温があと3℃上昇すると観られなくなるというショッキングな話をガイドさんから聞いて、あらためてIPCCの第5次評価報告書で述べられている2100年末には温室効果ガスの排出量が最も少なく抑えられた場合でも0.3~1.7℃の上昇、最悪の場合に最大4.8℃の上昇という予測が思い出されました。現在、世界各国で行われている温室効果ガス削減努力で気温上昇を2℃未満に抑えるという地球レベルの目標数値は皮肉にも紋別の大事な観光資源である流氷の消失と不可分の関係にあることが分かります。超大国の離脱などの理由で失敗に終わった場合には不可逆といわれる環境影響が牙をむいて襲いかかり、地域経済に留まらずに世界経済は大きな打撃を被る事になります。

 紋別における海氷現象の統計では「海明け」 (平年値:3月13日)、「流氷終日」 (平年値:4月1日)であることから、このエコニュース発刊の頃にはその姿はもう肉眼では観られなくなっているかもしれませんが、来年もまた変わらぬ姿を我々に観せて欲しいものです。

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