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エコニュースVol.291

2017年09月01日

<化学分析シリーズ Part13>

地下を流れる下水の可能性を私たちはまだ知らない

株式会社エコニクス 環境事業部
生活環境チーム 渡邉 雄大

 皆さま「下水」と聞いてまず何を思い浮かべますでしょうか?
 真っ先に「臭い」「汚い」など、ネガティブなイメージを抱く方が多いことでしょう。
 ですが、ここで見方を変えてみましょう。下水は年間を通して水温や水量がほぼ安定しています。おまけに下水道は非常に広範囲に整備され、処理された水は公共用水域にただ放流されているだけです。そう考えると有効活用できそうな気がしてきませんか?

 下水は外気温と比較して、夏は冷たく冬は温かいという特徴があります。その証拠に冬の雪が積もった日には、マンホールの部分だけ雪が解け、まるで落とし穴のようになっている光景を見ることがあります。これはマンホールに下水熱が伝わって雪を解かしているために起こります。つまり、下水には雪を溶かすほどの熱量があるということなのです。

 


マンホールの落とし穴は雪国ならではの冬の風物詩です。

 

 現在、下水の熱や性質を有効活用するための研究も盛んに行われています。北海道をはじめとする雪国では、期待されている活用法の一つにロードヒーティングがあります。一般的なロードヒーティングでは、道路に発熱線を埋設し、電気を使って発熱させ、そして融雪させています。これを電気ではなく下水熱で賄おうという技術です。下水の熱を利用して道路を温めることができれば、電気を一切必要としない夢のロードヒーティングとなります。実際に豪雪地帯の新潟県で実証試験が行われ、雪を溶かすことが可能と言う結果が出ています。

 国内外では下水の安定した水量を利用して発電機を回し、発電しようという試みも行われています。家庭や工場などで水が利用される限り発電することが可能です。常に水が使われている都市部ではうってつけの発電設備となりうるのではないでしょうか。この発電方式であれば、新たに土地を開発するといった行為も必要ありません。

 このように、下水はただの汚水ではなく、膨大なエネルギーを産むことができる資源となる可能性を秘めています。下水を活用する技術の多くは、研究段階でまだ課題も多いですが、大きなビジネスチャンスを感じます。今は全く利用されることなくただ処理されているだけの下水が、街中に眠る無尽蔵のエネルギー源として重宝される日が来るのは近いかも知れません。

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