株式会社エコニクス 電力環境部
火力発電所担当チーム 武田 康孝
ブリとハマチ、よく耳にする魚の名前ですが、実はこれらは同じ魚になります。ブリとハマチはスズキ目アジ科に分類される海水魚であり、寿司ネタとして知られているヒラマサやカンパチは同じ仲間の魚になります。また、体の大きさによってその呼び名が変化するいわゆる出世魚(しゅっせうお)としても有名です。正式な和名(標準和名)はブリ、学名はSeriola quinqueradiataになります。では、ブリとハマチとでは何が違うのかと言いますと体の大きさが異なります。関西では一般に40cmぐらいに成長したものを「ハマチ」、80cmを超えるものを「ブリ」と呼びます。ブリは西日本を中心に養殖が盛んに行われてきました。養殖ものとして出荷される大きさがこのハマチサイズであることが多かったことから養殖ものをハマチ、天然ものをブリとして呼び分けられたこともありましたが、必ずしもハマチ=(イコール)養殖魚を指す名称ではありません。
先に紹介しましたように、ブリは出世魚で体の大きさによって呼び名が変わります。例えば、関東で一般に使われる呼び名としては、モジャコ(体の大きさが6~7cmくらいまでの稚魚を指します。これは流れ藻「モ」に蝟集する小さい魚「ジャコ」→「モ+ジャコ」→「モジャコ」となったとされています。)、ワカシ(15 cmくらいまでのもの)、イナダ(40 cmくらいまでのもの、関西ではこのサイズのものをハマチともいう。)、ワラサ(60 cmくらい)、そしてブリ(80 cm以上)になります。以降のお話しでは呼称をブリとして統一します。
ブリは日本のほぼ全国の海で漁獲される魚であるため、各地でさまざまな名前で呼ばれており、大きさに伴う呼び名も大きく変わっています。その一例は以下の通りです(表1)。
表1 ブリの大きさに伴う名前の変遷例(筆者調べ)
※地域により呼び名が異なることもあります。
ちなみに北海道では体の大きさではなく、重さによって呼び分けている場合が多いようです。重さが1kg未満のものを「フクラゲ」、または「フクラギ」、1kg から5kg未満のものを「イナダ」と呼び、5kg以上のものが「ブリ」と呼ばれています(地域によって多少異なることがあります)。
また、ブリは回遊魚として知られていますが、広い範囲を回遊するようになるのは2齢以上になってからで、稚魚のうちは海流に乗って日本沿岸を北上します。ブリは主に九州の南西部、あるいは東シナ海で産卵します。孵化したその稚魚は対馬暖流にのって日本海沿岸を通って北海道の南部へと北上し、あるいは黒潮にのって太平洋沿岸を通って三陸周辺へ北上し(図1)、北の海の豊富な餌をたくさん食べて大きく成長します。また、やがて秋になり海水温が下がると南下して、九州へと戻ります。この途中、日本海を南下するブリが富山県や福井県沿岸を通るのが冬の時期であることから、この時期に漁獲されたブリを「寒ブリ」と呼び、最も脂がのって美味しいと言われています。ブリの生息適水温は13~18℃と言われていますが、近年日本沿岸の海水温が上昇していることから、最近では北海道沿岸でもブリを対象とした漁業(定置網漁業)が盛んに営まれるようになってきました。水温の影響を大きく受けるブリ資源ですが、昨今の海水温の変動を考えると、今後、北海道での漁獲量がますます増えていくかもしれませんね。
図1 ブリ稚魚の回遊模式図(山本ら(2007)を参考に作成)
【参考】