エコニュース

  • エコニュース
  • 藻場通信
  • エコ森林通信
  • 洋上風力通信

エコニュースVol.354

2022年12月01日

ワールドカップとSDGs

株式会社エコニクス 自然環境部
陸域担当チーム 渡邉 香織

 現在、サッカーワールドカップがカタールで開催されており、日々熱い戦いが繰り広げられています。もちろん日本も参加しているので、試合が気になって寝不足の方も多いのではないでしょうか。今大会では、試合後にロッカールームをきれいに片づけたり、スタジアムでゴミ拾いをしたりと日本の選手やサポーターの「行動」にも注目が集まっています。こうした公衆衛生の維持につながる行動は、周囲の人を巻き込んで広がり、SDGSsの達成へもつながっていくのではないでしょうか。

 さて、サッカーの結果も気になるところですが、私は試合で使用されている「スタジアム」も気になっています。なぜかというと、今大会で使用されている「スタジアム974」はサステナブルなスタジアムとなっているからです。

 なぜサステナブルなのかということですが、このスタジアム974は、規格化された鉄骨やコンポーネント化(部品化)された観客席や屋根が分解可能となっており、これらを詰め込んだコンテナユニットそのものがスタジアムの壁や床のパーツとなっています。このおかげで従来型のスタジアムの建設よりも資材が少なくて済むだけでなく、廃棄物の減量も可能となっています。大会終了後にはスタジアムを分解してコンテナに戻すことで、敷地を更地に戻し、コンテナユニットを次回のワールドカップでも再利用する「ビルディングブロック」を計画しています。つまり、ブロック玩具のように組み立てて、使用が終わったら、箱(コンテナ)に戻して別の場所でまた同じものを作ったり、分割して複数の会場を建設することもできるそうです。

 これまでにも、ロンドンオリンピックで、座席の再利用や仮設材そのものの利用などがありましたが、今回のようにパッケージにして、「輸送できるスタジアム」にしたのは世界初となります。ちなみに、「スタジアム974」の「974」はカタールの国番号であり、輸送用のコンテナも974個使用されているそうです。

 さらに、スタジアムを建設するにあたり、敷地へのインパクトについても検討されており、ワールドカップを含めた短期間で敷地周辺ににぎわいを生むことで敷地の不動産価値を上げ、大会終了後には更地に戻すことで都市開発によるさらなる投資を呼び込む高サイクルで持続可能な仕掛けが構想されています。

 また、地球環境保護の観点からも、廃棄物の低減やスタジアムパーツの再利用による資源保護、水利用の効率性を高める方法により、従来のスタジアム開発に比べ、40%の節水を実現しています。

 スタジアムの建設は使用する資材量の低減やCO2排出量の抑制がSDGsの観点からも大きな課題となっています。国際スポーツ大会において、スタジアム等の建設投資が右肩上がりの現状において、単に安くすませるということではなく、地球環境と地域経済との関連も含め、建設の必要性について検討していくことは今後も必要となるのではないでしょうか。

 


スタジアム974

もどる