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エコニュースVol.358

2023年04月01日

ネズッポ科(魚卵・仔稚魚)について

株式会社エコニクス 電力環境部
火力発電所担当チーム 齊藤 一

 

 ネズッポという名を聞いたことがあるでしょうか? 私はこの仕事につくまでは聞いたことも、気にしたこともありませんでした。『メゴチ』という名であれば皆さんも聞いたことがあるかも知れませんが、一般で言うメゴチとはスズキ目のコチ科に属する魚種を表します。北海道ではあまりなじみのない魚種ですが、てんぷら等の日本料理の素材として人気は高いです。

 冒頭で述べましたネズッポとはスズキ目のネズッポ科の魚種を表します。ネズッポ科のネズミゴチやヌメリゴチも『メゴチ』と呼ばれているため混同されることがありますが、分類(科)が違うため注意が必要です。

スズキ目 Perciformes
ネズッポ科 Callionymidae ゴチ科 Platycephalidae
ネズミゴチ Repomucenus curvicornis ヨシノゴチ(シロゴチ) Platycephalus sp.1
ヌメリゴチ Repomucenus lunatus マゴチ(クロゴチ) Platycephalus sp.2
  メゴチ Suggrundus meerdervoortii

日本産魚類検索 第三版 文章内のネズッポ科とコチ科魚種を抜粋(掲載順)

 ※ヨシノゴチとマゴチは別種扱いとされるが、学名については研究中のためそれぞれsp.1 sp.2として記載されている。

 

 そもそも、このネズッポ科が気になり始めたのは、弊社で夏季~秋季におこなう魚卵仔稚魚調査で必ずと言って良いほどに、ネズッポ科の魚卵が採集されるからです。ネズッポ科の魚卵は分離浮性卵で、卵径約0.6~0.7㎜と北海道沿岸で出現する魚卵のサイズとしては小さく感じます。特徴的なのは卵膜に亀甲模様(亀甲模様径約0.014~0.025㎜)があることです。この2つの特徴は、ネズッポ科の魚卵と特定する上で大きな特徴となります。では、なぜ『ネズッポ科』と、種名ではなく科名で留めているのかと言いますと…卵径と亀甲模様の大きさが種間レベルで微妙な違いしかないため、「この種です!」とはっきりと言い切るのが難しいからです。

 
写真1 ネズッポ科の魚卵         写真2 ネズッポ科魚卵卵膜の亀甲模様

 

 そして、ネズッポ科の魚は、孵化したばかりの仔魚も小型で、全長は約2㎜の大きさしかありません。頭胴部が大きく、腹部が黒色素胞(メラニンを含む色素細胞で黒く見える部分)で覆われるのが特徴です。こちらも『ネズッポ科』と科名で留めています。魚卵と同様に種を同定する各鰭の鰭条数や脊椎骨数などの計数形質が種間レベルで近似していること、また、黒色素胞の分布(有無および個数)も極微妙なサイズ差で変化してしまうことから、種の同定が容易ではないため『ネズッポ科』としています。

 このようにネズッポ科は科の特徴までは比較的得やすい魚種なのですが、その後は、全長10㎜前後の成魚に近い体形(稚魚期)になるまでは種の同定が困難な魚種だと言えます。
 


写真3 ネズッポ科の仔魚

 

(参考文献)

内田ら(1958)日本産魚類の稚魚期の研究.九州大學農學部.
水戸(1962)日本近海に出現する浮遊性魚卵—Ⅴ ネズッポ亜目およびアシロ亜目.九州大學農學部.
沖山(2014)日本産稚魚図鑑第2版.東海大学出版会.
尼岡ら(2020)北海道の魚類 全種図鑑.北海道新聞社.
中坊ら(2013)日本産魚類検索第3版.東海大学出版会.

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