株式会社エコニクス 電力環境部
泊発電所担当チーム 外崎 秀和
地球温暖化対策の取り組みとして、「ゼロカーボン」、「カーボンニュートラル」、「脱炭素」、「カーボンフリー」などといった言葉を見聞きする機会が増えたと思います。これらは「CO2(二酸化炭素)などの温室効果ガスの排出量を削減し、持続可能な社会を構築していきましょう」というものです。
今なぜ、ゼロカーボンへの取り組みが取り沙汰されているのでしょうか?
私の住む北海道においても、気候が大きく変わりつつあり、その影響からか大規模な自然災害が目立つようになってきました。局地的な大雨による河川の氾濫をはじめ、「観測史上最大の大雨」や「100年に一度の大雨」といったニュースを頻繁に見聞きするようになったと思います。近年最大積雪量は少なくなってきている印象はあるものの、積雪が少ないと思いきや急激に増えた年があるなど、増減が激しい状況にもあります。こうした「気候変動」をもたらす要因の一つとして考えられているのが、CO2(二酸化炭素)などの温室効果ガスによる地球の気温上昇です。
それでは「ゼロカーボン」として目指すところはどこでしょうか?
「CO2の排出を全て、無くそう」ということではなく、工場や家庭の暖房、車の排気ガスなど様々な所からCO2などの温室効果ガスが排出されています。これらからの排出量を減らす工夫をしながら森林や海に生育する海藻類にCO2を吸収させ、排出量と吸収量を同等にすることで、持続的な社会を構築させようというものです。
現在、北海道の地球温暖化対策推進計画では、2013年を基準とし、2030年までの温室効果ガス排出量の削減目標を定めています(図1)。そこには中期目標で約48%の削減を目指し、長期目標として2050年までに実質ゼロとしています。
図1 北海道の地球温暖化対策計画
出典:ゼロカーボン北海道推進計画より1)
このゼロカーボンを達成するためには現状最もCO2を排出しているエネルギー分野における削減が重要となります。そのためCO2を排出しないクリーンなエネルギーとして風力、太陽光、水力、バイオマス、地熱といった再生可能エネルギーが注目されています(図2)。
図2 北海道の主な再生可能エネルギーの状況
出典:北海道データセンターポータルサイトより4)
大規模な太陽光発電(メガソーラー)においては、太平洋側に位置する苫小牧地域や釧路地域に多く建設されています。これらの地域は比較的降雪が少なく、冬季の日照時間が著しく落ち込むことがなく年間を通じた日射量が多い地域です。また、地域内外の大電力消費地や大型の変電設備に近く、広大な工業用地もあることから多くのメガソーラーが立地されています。
風力発電においては、北海道の道北や道南、石狩エリアにおいて、事業計画が活発化しています。その中で、石狩市は、石狩湾新港地域において再生可能エネルギーを活用する「スマートエネルギー」構想3)を掲げており、石狩市域に多く賦存する再生可能エネルギーを活用した「安定・安全・安心な再生可能エネルギー需給システム」の構築を通して、「再生可能エネルギー100%ゾーン」を実現し、さらにはエネルギー新産業創出による地方創生の実現を目指しています。特に石狩湾は、日本海からの風が年間を通して吹き、風力発電に適した地域であるため、近年は、NPO法人である北海道グリーンファンドや(株)市民風力発電による地域住民参加型の風車が設置されているほか、グリーンパワーインベストメント(GPI)(株)は、「港湾区域」に100MW規模の施設を建設して商業運転を開始し、またその外側の「一般海域」では、国内外の企業による数百MW規模の洋上風力発電事業が多数計画されています。
北海道環境白書’22によると、北海道の再生可能エネルギーのポテンシャルは、風力発電、太陽光発電、中小水力発電で全国1位、地熱発電は全国3位、バイオマス産業都市の数(37市町村)は全国1位であり、日本国内においては脱炭素化社会の実装にむけて高く期待されているところです。
さらに我々の日常生活にも目を向ける必要があります。ライフスタイル、ビジネススタイルも転換期にきており、自治体、事業者、そして我々一人ひとりが意識と行動を変え、協力し合い、表1に示す施策を長期的な視点で積極的に推進してく必要があります。
表1 「ゼロカーボン北海道」における重点的に進める取り組み5)
①多様な主体の協働による社会システムの脱炭素化 |
・脱炭素方ライフスタイル・ビジネススタイルへ転換 ・地域の脱炭素化 ・交通・物流の脱炭素化 ・「グリーン×デジタル」の一体的な推進 ・ZEB,ZEHの普及など建築物の脱炭素化推進 ・持続可能な資源利用推進 ・革新的イノベーションによる創造 ・気候変動への適応 |
②豊富な再生可能エネルギーの最大限の活用 |
・地域特性を活かしたエネルギーの地産地消の展開 |
③森林等の二酸化炭素吸収源の確保 |
・森林吸収源対策 |
北海道の豊かな自然と再生可能エネルギーのポテンシャルの高さを活かし、新たな取り組みが地域経済を活性化させ、その先には我々の暮らしが豊かになっていくことが理想です。
我々一人ひとりが意識を変え、脱炭素の視点を持って責任ある行動をとることで、環境と経済・社会が調和しながら成長を続ける「ゼロカーボン北海道」の実装を目指しましょう(図3)。
図3 ゼロカーボン北海道の目指す姿
出典:ゼロカーボン北海道推進計画より1)
近年は弊社においても自然環境に関わるお問い合わせが増えております。自然環境の調査・分析についてのお困り事は遠慮なくご連絡ください。
参考資料
1)ゼロカーボン北海道推進計画 (北海道地球温暖化対策推進計画(第3次)[改定版]) - 経済部ゼロカーボン推進局ゼロカーボン戦略課 (hokkaido.lg.jp)
2)エネルギー地産地消導入検討マニュアル.pdf (hokkaido.lg.jp)
3)石狩湾新港地域におけるスマートエネルギー構想
4)再生可能エネルギー - 北海道データセンター関連情報 統合ポータルサイト (hokkaidodatacenter.jp)