<化学分析シリーズ Part6・温泉 その2>
株式会社エコニクス
技術開発部 試験分析チーム 舟木 由衣
温泉っていいですよね!私も大好きです。特に仕事で温泉と関わるようになってからは、温泉に行った際に、温泉の成分などが書かれた温泉分析書をじっくり読むようになりました。温泉分析書は温泉施設に必ず掲示されていますので是非ご覧になって頂きたいのですが、実に様々な化学物質の名前が記載され、一般の方にはなかなかとっつきにくいものであるというのも事実です。
そこで今回は的を絞った「私流温泉分析書の見方!」をご紹介したいと思います。
① pHをチェックしよう
pHは水が酸性かアルカリ性かを示す指標です。pH7(中性)を境として数字がそれより小さいと酸性、それより大きいとアルカリ性と呼ばれます。酸性の強い温泉はピリピリとした刺激があり、お肌の弱い方には不向きですが、殺菌力が強く慢性の皮膚病に効果があります。日本ではあまり多くない珍しい温泉です。アルカリ性の温泉は皮脂を良く溶かすため、お肌がすべすべになります。
② 遊離二酸化炭素をチェックしよう
遊離二酸化炭素は一言で言うと炭酸ガスのことです。この成分が多く含まれる温泉は、加温によって発泡するものがあり、お肌に気泡が付着します。炭酸ガスは体内に吸収され血管の拡張を促すので血圧降下が期待できます。“泡がつく”というのが何とも温泉らしく、個人的憧れの湯です。あったまりますよ~!
③ 特殊成分をチェックしよう
特殊成分とは温泉の医冶効能を考える上で、特徴的な役割を果たす成分です。いくつか種類があるのですが、私が着目するのは“鉄”と“硫黄”です。
鉄分を含むお湯は空気に触れると鉄が酸化されますので褐色のお湯が特徴です(釘が錆びると赤茶色になるのと同じです)。月経障害や貧血など女性に多く見られる症状に効果があります。
硫黄分を含むお湯は、独特の香りがあり火山地帯に多く見られます(一般的に温泉をイメージする匂いかと思います)。糖尿病や高血圧、動脈硬化症の改善に効果があります。
温泉分析書の泉質という項目に温泉の名前が記載されていますが、ここに“鉄”、や“硫黄”あるいは“硫化水素”という文字が入っていれば、鉄や硫黄の薬効が期待できる貴重な温泉です。
その他、特殊成分を含む温泉ではありませんが特徴的な温泉として、道内各地で見られるコーヒー色の茶色い温泉は、腐植質を多く含んでおりモール温泉と呼ばれる珍しいお湯です。またしょっぱいお湯は塩化ナトリウムを多く含み、よく身体が温まり湯冷めしにくいため“熱の湯”と呼ばれます。のぼせ注意です!!
いかがでしょうか?この3つの項目をチェックするだけでも、お湯の特徴が判り今まで以上に温泉に興味がわくこと請け合いです。
最後に温泉分析を始めてことさら感じることですが、温泉を維持管理し守っている方たちは、皆さん“うちのお湯”に誇りを持って大切にされています。利用者はマナーを守って自然の恵みをゆったり堪能して下さい!