<海の生物シリーズ Part24・魚類 その5>
株式会社エコニクス
顧問 佐々木 達
21世紀の世界人口の増加に対するたんぱく質の確保は水産資源の賢い利用に掛かっていると言われています。
世界の漁業総生産は下図に示すように著しい増加を示していますが、増加分の多くは養殖生産量によるもので、漁獲量はむしろ減少傾向にあり、特に公海漁業資源が深刻です。Newsweek日本版によると、歯止めなき乱獲(投棄魚や混獲も含む)、困難な公海漁業の監視、温暖化による生態系の破壊等によって、世界の海洋資源の40%は壊滅的なダメージを受けていると言われています。
資料:FAO 「Fishstat(Capture production 1950-2007)(Aquaculture production 1950-2007)」(日本以外の国)及び農林水産省「漁業・養殖業生産統計年報」(日本のみ)を元に水産庁で作成
水産資源を持続的に確保・利用していくために、行政サイドはもちろんのこと諸団体などが様々な取り組みを行っています。
世界的規模では、漁業認証と水産エコラベル制度を通じ、持続可能な漁業を推奨し、水産物購入時の消費者への選択情報をもたらすMSC(Marine Stewardship Council,海洋管理協議会)における認証制度1)、日本では水産資源と生態系の保護に積極的に取組んでいる漁業を認証し、その製品に水産エコラベルをつけるマリン・エコラベル・ジャパン(MELジャパン)2)などの取り組みがあります。
魚介類の食材の提供については有名料理人の責任が大きいことから、ロンドンに3つの有名レストランを持つイギリスのトップシェフのGordon Ramsay、コーンウォール州を本拠地にするレストランRick Steinでは、タラ、ヒラメ、カレイと言った一般的な商業的な魚をメニューから外し、持続可能な漁法で獲られたこれまであまり料理に使われなかった魚を推奨しています。
また、アメリカのモントレー水族館では、全米を7つの海域(その他、寿司ネタとしての魚介類)に分け、海域ごとの水産魚介類の資源状況から、食用として利用されている魚介類をAvoid「絶対に食べない種」、Good Alternative「ちょっと考えさせられる種」、Best Choices「良心の呵責なしに食べる魚」の3つのカテゴリーに魚介類をわけ、ポケットガイド Seafood WATCH3)として広く一般の人々に資源の現況を知らせるとともに、食の選択の情報を提供する取り組みが行われています。
北海道は日本の漁獲量の1/4を占める水産王国です。観光客の多くが北海道の水産物を目当てに来道します。北海道では、南かやべ定置漁業協会のMELジャパン認証の取得、MSCへの認証を目指した北海道漁業協同組合連合会のシロザケ、ホタテガイの取り組み(認証審査中)なども行われ、資源の持続的利用への道筋も出来つつあります。それに加えモントレー水族館で行われているような民間における水産資源保護のための情報提供など様々な取り組みが行われ、私たちが賢く魚介類が食べられる環境が出来ることが望まれます。
<参考文献>
・フィリップ・キューリ、イブ・ミズレー(林昌宏訳)2009:魚のいない海 NTT出版
・チャールズ・クローバー(脇山真木訳)2006:飽食の海 世界からSUSHIが消える日、岩波書店