漁業シリーズ Part1・内水面漁業との共生 その3
株式会社エコニクス
取締役 佐々木 達
ワカサギは冷水性魚類ですが、生息適温範囲が0~18℃と広く、石狩川、網走湖、小川原湖、八郎潟、穴道湖、霞ヶ浦、北浦などに天然分布し、また、環境に対する適応性が強いため、多くの湖沼や人工湖に移殖され生息しています。
北海道では表に示すように、河川では石狩川水系、ヤウシュベツ川、風連川、湖沼では網走湖、塘路湖、大沼、阿寒湖、洞爺湖などに分布し、漁業が営まれています。このうちで石狩川水系と網走湖、阿寒湖が北海道の漁獲の大半を占めています。
主要河川、湖沼におけるワカサギの漁獲量(t)
ワカサギには成育期の大部分または一部を海で過ごし、成熟にともない河川に遡上するタイプと、一生を淡水中で過ごす陸封タイプがいます。
また、河川に遡上するタイプは、春に海から河川に遡上し産卵するものと、網走湖のように秋に海から遡上して湖で越冬し翌春河川に遡上して産卵する2タイプがいます。次に、漁獲量が多い網走湖でのワカサギの生態について北海道立網走水産試験場の報告を基にみて行きます。ほとんどの個体が満1歳で成熟し産卵に加わります。産卵期のピークは、4月中旬から5月上旬で湖の流入河川の砂礫や水草に卵径1mm位の付着沈性卵が産みつけられます。産卵された卵は5、6月頃、夕刻に一斉に孵化し、孵化仔魚は湖に下って、湖中で成長します。夏になると湖に残る個体(残留型)と、海に下る個体(遡河回遊型)とに分かれます。遡河回遊型は大潮時の夜間に活発に降海するようです。海に下ったワカサギは沿岸域で成長し10~12月にふたたび湖にもどり、湖で冬を越し良く春産卵してほとんどの個体が死亡します。ただし、2、3年間生き残る個体も僅かながらいます。ワカサギの漁獲量にはかなりの年変動が見られます。湖内では収容力が決まっている為、資源量増大・魚体の小型化・初期生残率低下・魚体の大型化・初期生残上昇・資源量増大といったサイクルが繰り返されているからです。今後ワカサギ資源を高位に安定的に保って行く為には、ある一定量の産卵数を確保すると共に、産卵場である河川や、湖沼、そして汽水環境の保全につとめることが極めて重要になってきます。