北海道の花シリーズ Part3
株式会社エコニクス
契約社員 北ノ森自然伝習所主宰 三木 昇
7月中旬、小清水の原生花園を訪れました。
何台ものバスが連なり、そのにぎわいに目を見張るものがありました。しかし、花の少ないことには驚きました。同時に行った野付崎の放牧跡地が一面のオレンジに染まり、こちらの方が見事でした。小清水は北海道観光の看板のひとつですがこれでは寂しい。小清水でもこの点に気づいて火入れなど対策を数年前より始めています。早く往時の美しさを取り戻してほしいものです。
原生花園は長い間の放牧により成立したものです。その歴史を忘れて天然自然で出来たものだから、人為を加える必要など気づかなかったのです。
スズランの南限地で貴重なスズランを守るため柵を設けて家畜や人の立ち入りを阻止しました。そうしたところ柵の中のスズランは無くなり柵の外では生育していたということがありました。柵で囲う前は毒草であるスズランが食い残されていたのですが、これを柵で囲うと大型の草本が食われることがないので生育を始め、それにスズランは負けてしまったのです。これもその植物社会がどのような過程で成立したかを見て取れなかった愚です。
このところ植生の回復や再生ということがよく言われますが、こうした植物社会の遷移の位置付けという視点をまったく持たないで事に当たっているような気がしてなりません。スズランの例に見られるようにある種のみに着目しているように見えます。ある植生は植物社会として長い歴史を持って遷移しているという視点が必要です。
工事をする際、対象地は面積的な制約や社会の要請というものがあり、こうした制約の中でできることは何か、それは原植生を100とした時、20なのか30なのか、また植生遷移のどの位置にあるかを量らなくてはなりません。このためには、技術者に豊かな自然というもののイメージがないとよい自然の再生など難しい。平たく言えば原始林に足を踏み入れたことがない技術者はだめだということです。
技術者よ、もっと自然を見よ!