<食環境シリーズ Part5>
株式会社エコニクス 環境技術研究所
研究開発チーム 多田 憲司
「生活習慣病」という漢字の目新しさもなくなり一般的な用語となってしまった昨今、巷では「メタボ」というカタカナがにぎわいをみせています。
高血圧や動脈硬化に代表される生活習慣病の予防やダイエット等、健康志向を追い風に機能性食品に対する関心が高まり、動脈硬化防止、美白、高血圧の予防、血糖値改善、抗肥満、抗酸化といった機能のある食品や医薬品が販売され、その市場は年々拡大しています。
ヒトは外部から水分や栄養素を取り込み、体内で様々な物質に変化させ、活用しています。「1日30品目食べるとよい」とは昔から言われておりますが、なかなか難しいことでもあります。当然、不足する栄養素もあるでしょう。
そんな中、ビタミンや鉄分など栄養素のタブレットが流行った時代がありました。「疲労時にはビタミンCが効く」、「貧血気味のときは鉄分を摂るとよい」など言われていたことを思い出します。
少し前では「ポリフェノールが高血圧や動脈硬化の予防に効く」ということでワインが注目を集めたり、「カテキンに脂肪燃焼効果がある」とういことで緑茶が注目され、最近では「バナナはダイエットに最適」ということでバナナが売り切れたりしました。
サプリメントという形だけではなく、食品の機能という視点も加わってきているのが最近の傾向といえるでしょう。
その機能性物質と機能について一例を紹介します。
これら機能のうち、抗酸化力については農林水産省が分析手順の統一化や表示の方法の検討に乗り出しました。その手法は「AOU(ORAC等)」といい、もともとアメリカ農務省が開発した抗酸化力を評価する指標で、日本では2007年からAOU研究会が抗酸化力の評価手法を検討していました。※AOU:Antioxidant Unitの略。
食品の抗酸化力に対する統一した指標「Antioxidant Unit」に関する研究会のホームページはこちら※ORAC:Oxygen Radical Absorbance Capacity:活性酸素吸収能力
アメリカ農務省等で開発された抗酸化力の評価指標。すでにアメリカでは200種類以上の製品にORAC値が表示されています。近い将来、世界的な統一評価指標になるといわれています。
抗酸化力には、ワインに含まれるレスベラトール(ポリフェノールの一種)に代表される活性酸素を除去する機能が有名です。前述した「ポリフェノールが高血圧や動脈硬化の予防に良い」とされるのは、この機能によるものなのです。
活性酸素は老化の促進や動脈硬化の原因となることがすでに解明されていますが、人間の体内においてもカタラーゼやスーパーオキシドジスムターゼ(SOD)などの酵素が体内の活性酸素を除去しています。しかし、これらの酵素は加齢や体調の変化などでその働きが低下することがあり、よって体外からの補給が必要となります。このように不足している成分や機能性物質を補完するために機能性食品等が利用されるのです。
財団法人日本健康・栄養食品協会のホームページでは、健康食品に関する様々な情報が公開されています。興味のある方はご覧下さい。
※(財)日本健康・栄養食品協会のホームページはこちら
人間の体内では作れない栄養素を効率よく補給するための機能性食品ですが、そのほとんどが自然界に存在するものであることはおわかりのとおりかと思います。含まれる部位も普段食べている部位とは限らず、ブドウのポリフェノール、レモンのエリオシトリンなどのように外皮にも含まれているものや、様々なものに利用されているキトサンもカニの外殻に多く含まれています。これら外皮や外殻は従来においては捨てられていましたが、機能性成分が発見されて以来、有効活用について様々な研究や開発が行われています。
それぞれの素材が持つ機能、また、それらをどのように活かすことが出来るか、新たな機能性物質の発見も含め、北海道産の各種天然素材の機能や効能を明らかにし、北海道の豊富な農林水産資源の高付加価値化や未利用資源の有効利用などを通して一次産業の活性化に貢献するのが我々の役割と思っています。