エコニュース

  • エコニュース
  • 藻場通信
  • エコ森林通信
  • 洋上風力通信

エコニュースVol.035

1996年05月01日

湿原シリーズ Part2・湿地、湿原、泥炭地

ウイスキーの故郷をたずねて

株式会社エコニクス
 顧問 北星学園大学教授 辻井 達一

 湿地というのはもっとも広い概念です。英語ならウェットランドがそれにあたり、海岸の塩湿地から淡水の湿原まで広くこれに入ります。

 湿原というと一般には淡水に涵養される湿地を指します。しかし、その全てが泥炭地ではありません。湿原に泥炭が生成されるのは事実ですが、すべての湿原で泥炭が生成されるのではないのです。泥炭というのは植物の遺体が分解不完全な状態で堆積したもので、条件によって幾分かのミネラルや土壌を含んでいます。つまり泥と植物繊維の固まったものです。分解不十分というのは基本的には酸素の供給が少ない場合に生じるわけですから気温が高くてもそうした条件があれば泥炭は形成されます。ですから熱帯にも泥炭は生成します。しかし、気温が低いほうが分解はより不十分になりますから高緯度地方のほうが泥炭形成は起こりやすいことになるわけです。そこで北半球ではシベリア、北欧、カナダやアラスカなどにその典型的なものがみられることになります。日本では北海道や東北地方の北部に多いことになります。

 泥炭はその名のように燃えます。つまり植物が燃えるわけです。ですから昔から燃料として使われてきまして、今でも燃料用に採掘されています。北ヨーロッパでは泥炭発電所まであるくらいです。日本でも津軽地方ではサルケという呼び名で燃料に用いられていました。サルというのはアイヌ語で湿地、ことにヨシ湿原を指す言葉ですから、東北地方に伝えられたものでしょう。

 ウィスキー醸造用の麦芽を燻すにも用いられます。スコッチの色や香りは泥炭のものなのです。そうなると泥炭が身近な存在として意識されるのではないでしょうか。泥炭のもっとも大きな用途は今では土壌改良材です。また、その吸着性を利用して栽培漁業用の飼料の展着材にも、そしてオイル・フェンス用にも使われています。

もどる