流氷シリーズ Part3
株式会社エコニクス
調査Ⅰ部 環境モニタリンググループ 村井 克詞
前号では、オホーツク海の北海道沿岸の気温が、この沿岸の流氷の勢力に少なからず影響を与えているのではないかということで、沿岸気温と流氷レーダ観測範囲内の流氷の勢力の関係に注目しました。そこで今回は、冬季の平均気温が実際、何度上昇すると北海道沿岸の海が凍らなくなるか、紋別のデータを用いて検討してみました。
冬の平均気温の上昇は、最近9年間の平均気温を平年値として単純に1℃、2℃・・・という具合に下駄をはかせてみました。海面から奪われる熱量を計算し結氷温度である-1.8℃に達する日を推定結氷初日としました。氷の厚さの計算は、推定結氷初日から気温が結氷温度を超える日までとしました。
1℃づつ下駄をはかせ計算を進めていくと下駄を4℃にした時にかろうじて最大氷厚が6cmになり、下駄を5℃にした時、計算した水温が結氷温度に達しなくなるという現象が生じました。水温が結氷温度に達しないと海水は凍らないということです。これは、あくまで北海道沿岸の話で、実際にオホーツク海から流氷が消えるということは無いと思います。
ただし、気温の上昇と共に流氷の勢力が弱くなり、南下がかなり遅くなることが予想されます。海が凍ってできる流氷は、気候変動に極めて敏感に反応するという事が言えると思います。
第1図 平年気温に4℃下駄をはかせて計算した水温と氷厚(模式図)