陸の生き物シリーズ Part7・危険な生物 その3
株式会社エコニクス
環境事業部 陸域環境チーム 山越 千鶴
当社の植物調査員が、最も恐れる生物。それは実は「ハチ」です。草の覆い茂る中で、ハチの巣にすぐに気付くことは難しく、対策によりある程度危険回避が可 能な熊よりもずっと怖い生物なのです。地中に巣を作るハチもおり、うっかり巣を踏んでしまい地面から『ブワッ』とハチが出てきて刺されるということも。
対策としては、黒いものを身に付けないことが重要です。特に、日本人は黒髪ですので、頭をタオルで覆ったり、帽子をかぶる必要があります。また、急激な 動作をしないこと。ハチを振り払った行為が、攻撃ととられて襲われる可能性があります。ハチの中でもスズメバチに刺された時の痛みは強烈で、刺されたこと のある人によると「頭をガツンと殴られたような衝撃が走る」とのことです。
痛いだけならまだ我慢できますが、怖いのはアナフィラキシーショックと呼ばれるアレルギー反応です。ハチの毒により強いアレルギーが引き起こされた場 合、嘔吐、全身のじんましんや、呼吸困難や意識障害などのショック症状があらわれ、時には死に至ります。特に一度刺された事のある人は、体内に抗体を持っ ている可能性があるため注意が必要です(初めての場合でも症状が出る人がいるそうです)。アナフィラキシーを起こした場合の処置としては、薬を自己注射 (エピネフリン注射)する方法があります(それには医師の処方が必要で、しかも30分以内だそうです)。心配な人は、一度病院へ行き用意しておくことをお 勧めします。
次に、知らないうち刺されている!という場合があるのが、ドクガです。ドクガには卵から成虫までのほぼ全世代に毒針毛と呼ばれる体毛をもち、これに触れ ると皮膚にかゆみや炎症を起こします。直接触れなくても、毛が風により飛散するため、知らないうちに被害に遭うことも多いのです。調査中、ドクガの幼虫を よく見かけますが、これが大発生している時は悲惨です。夏の暑い最中、カッパを着て、タオルを首周りに詰め顔に巻き、完全防備で挑みますが、やはり細かい 毛は防ぎようもなく、手足やお腹に発疹が広がるのです。
これも、症状には個人差があります。刺されてしまったら、その箇所をまずこすらないよう注意し、大量の水で洗い流したり、幅の広い粘着テープ等を軽くあ て、毒針毛を取り除きます。また、抗ヒスタミン剤を塗ったり、ひどいときには医者による治療が必要です。ドクガによる被害は、野山に限ったことではありま せん。何年かに一度、庭の植木等に広い地域で大発生することがあり、このような時は布団や洗濯物を干さないことです。飛散した毒針毛が布団等に付着し、そ れによる被害も発生しています。
また、調査中、最も回避に労力を費やすのが「蚊」です。対策としては蚊取線香を腰に下げるくらいしかないのですが、あまりにひどい場所では2・3個線香 を使用し、煙にいぶされ燻製になりながら歩きます。少しでも蚊を減らそうと自分の頭をバチバチ叩くと、そんな煙の中でもボトボトと蚊が落ちてきます。尋常 でない蚊の数にイライラが募り、思いっきり頭を叩きすぎてクラッとすることもしばしばです。他にハッカ油も蚊避けとしてよく用いられます。蚊取線香は少し 健康面が気になりますが、ハッカ油でしたら安心です。タオルに染み込ませて首に巻けば、冷涼効果も得られます。余談ですが、昨年、一緒に現場に入った調査 員の頭の上に、2~3mの蚊柱が立つという衝撃的な光景を目撃しました。ここまでの状態になると、線香もハッカも効かないようです。ちなみにこの日は、服 の上からも容赦なく蚊に刺され、全身がボコボコでした。
以上、紹介した生物以外にも野外には危険な生物が多数存在します。危険生物を回避するには、まず相手を知ること。例え危険生物でも、その生態などは興味深いものです。危険を上手く回避しながら、外の世界を楽しみたいですね。
○ハチの毒の詳細についてはこちらをご覧下さい。
○正しい蜂の刺されかた?!といったものもあります(内容はいたって真面目です)。