森林シリーズ Part2・森林のはたらき その2
株式会社エコニクス
環境部長 油津 雄夫
森林は、私たち人間の生命、生活、産業活動に重要な役割を果たしています。森林は、きれいな水、まろやかな水をかもし出す(前号)とともに、洪水、渇水を緩和してくれています。森林に降った雨は、少し湿ったスポンジに水がしみ込むように土壌にしみ込み、土壌中の隙間(容積比50~90%)をゆっくりと移動して、徐々に河川に湧き出し、あるいは、地下水脈に入って数百年後に湧き出してきます。このように森林では、裸地や草地などに比べて土壌へのしみ込みが良いことから、豪雨や雪解け水が地表流となって、短時間のうちにどっと河川に流出する水量は少なく、河川の増水時のピークが低くなり、洪水が緩和されます。また、土壌中の隙間をゆっくり動いて日照りにも水が湧き出し、渇水になることが少ないのです。森林空間研究所の東三郎先生の著書「北海道 森と水の話」には、かつて渇水で困った天売島と焼尻島の渇水時の湧水量の裸地・草地・森林の差や湧水量がほとんど無かった裸地に植栽した木々の枝葉が繁ると、多くなった例などが紹介されています。裸地や草地に比較して、森林で渇水期にも豊かな水が湧き出る理由は、裸地や草地では、日照りの際に土壌の中に乾いた層が形成されて、雨が降ってもしみ込みにくく、枝葉で覆われた森林の中は、直射日光がさえぎられ、風が吹き抜けないので、土壌も湿っており、いつも水を受け入れることができます。また、冬期、裸地や草地では、風で雪が飛ばされて土壌が凍結するが、森林では、雪が吹きだまり、土壌凍結がおさえられて、厳冬期でも水がしみ込むことにあると考えられます。
森林は土壌中に張った木々の根が土砂を抑さえ、また、大雨の際にも、地表面を覆う下草や落ち葉が水の勢いを弱め、土壌がどしどし水を吸収して、山地から土砂が流れ出すのを抑えて、川や海岸が荒れたり、ダムが土砂で埋るのを防いで、国土の保全にも大きく貢献しています。