森林シリーズ Part3・森林のはたらき その3
株式会社エコニクス
環境部長 油津 雄夫
森林は二酸化炭素を酸素に変えて大気を浄化する能力が高い。樹木は太陽エネルギーと水と二酸化炭素で光合成を行い、木材(セルローズ)を生産します。おおよそセルローズ1kgを生産する時、二酸化炭素1.6kgを吸収して、酸素を1.2kg放出し、炭素を0.4kg固定します。日本の森林では年間1千万トン(平均ヘクタール当り3.2トン)の二酸化炭素(排出量の約17%)が固定されていると推定されており、地球規模で二酸化炭素の増加が進んでいる昨今、樹木の炭素固定機能に期待が高まっています。
森林空間は裸地とちがった穏やかな気候を持っています。枝葉の層が空気の動きの少ない特殊な気層を森林内部につくり、射しこむ太陽光線と放射熱はぐんと少なくなります。地面からの蒸散は抑制されますが、樹木を通じた水の蒸散は多くなります。その結果、最高最低の格差の小さい気温と地温、高い湿度の森林気候がつくられて、防風・防雪・防霧などの気候暖和の効果を発揮しております。さらに騒音の吸収、汚染物質・塵埃の吸着・濾過、健康に良い揮発物質の放出とあいまって、森林内部だけでなく、周辺の地域にも快適な生活環境が形成され、保健休養の場として、人々の生活に役立っています。
森林は、このほか、野生生物の成育環境や自然景観、文化資源としての効用もあります。森林の環境財としての役割を効果的に発揮するためには、身近なところに、小流域毎に適正に配置されていることが望ましいと思われます。ことに、水質浄化、土砂流出防止、魚類生育のためには河川水辺の森林が重要な役割をはたしています。
ちなみに、日本の森林の環境財としての価値は年間約38兆円(`86年、林野庁)と算出されております。