ウニシリーズ Part2・ウニの生態について その2
株式会社エコニクス
顧問 富士 昭
ウニ類は砂泥底に生息して、親戚筋のナマコ類のように泥に含まれている有機物を栄養とする食性の種でも、海藻群落を形成している海域にもってくると海藻を摂食して正常な生活をしますし、また、魚の死骸などを与えると盛んに食べます。したがって、ウニ類の食性は生態学的には「雑食性」となりますが、エゾバフンウニ(俗称ガゼ)やキタムラサキウニ(俗称ノナ)などの日本の食用ウニ類は自然海域では海藻類を餌にしているのが普通です。海藻類の着生は、岩礁域や人工構造物等で見られ、ガゼやノナの「食物環境」を形成しています。ウニ類の体支持と移動をつかさどる器官は体表を包む「棘」と、棘と棘の間にある「管足」で、昼間は岩の下側や亀裂部に管足で体を固定していますが、夜間には棘と管足を使って活発な索餌活動をします。ノナやガゼもこのような日周活動をしていますので「棲み付き環境」も岩礁域となります。岩礁域は(1)広大で平坦な一枚岩、(2)一枚岩でも小さい溝が多く走っている岩盤、(3)直径50-100cm以上の転石域、(4)直径20-30cmほどの玉石域、(5)砂礫域、という5つの底質型の組み合わせから構成されているのが普通です。エゾバフンウニやキタムラサキウニが生息するのはこのうち(2)、(3)、(4)で平坦な岩盤上や砂礫域には棲み付きません。年齢1、2歳の幼体ウニは玉石域を、3歳以上の成体ウニは転石域や溝部を主な棲み場としております。体が小さく管足付着力も弱い幼体ウニは波の衝撃から保護される小さい隙間を作る玉石と玉石の小空間を、ある程度成長して体も大きくなって管足の付着力も強くなった成体個体になると石と石の隙間も大きく、大型海藻の着生を見る転石域を棲み場とするようになります。このような岩礁域であってもガゼやノナのような北方種は高水温への耐性が弱くて水温が20℃を超えると死亡しますし、低塩分への耐性では70%海水が事実上の下限となります。「低水温、高塩分で複雑な物理的空間を持つ岩礁域」がガゼやノナの好適な棲み場条件と言えましょう。