海環境シリーズ Part10
株式会社エコニクス
部長 飯島 龍三
日本海側の風物詩となっている波の花は、冬の寒い、海が荒れた天候の日に割と多く見られます。岩場に砕け散った波が白い泡となってそれに海中に浮遊している植物プランクトンが粘着してまるで白い綿菓子の様になって海岸・海面に広く淡雪の如く現れます。
風の強い日には、空中に舞い上がり綺麗ですが車や人に付着すると時間とともに薄い茶色になるので厄介です。また、季節限定の自然のオブジェとは言え、塩を含んでいることから海岸線の送電線や通信線、住居のトタン屋根やテレビアンテナなどの金属部分にサビを誘発させたり、樹木や農作物に付着して影響を及ぼすと言われています。
海岸線近くに設置されている火力発電所や原子力発電所の温排水*の放水口でも波の花の風景が観察されることがあります。
火力や原子力発電所では、海から冷却水として海水を取水し、使用した後は数度上昇した温排水となって放水口から海中に放水されます。海中に放水するときに空気を巻き込むと気泡が出来て海中の植物プランクトンが付着し、自然界と同様に白い波の花が出来ることがあります。このように出来た波の花は、少し厚みを持って海面をフワフワと漂います。また、波の花が空に舞い上がったときなどは、遠いところから眺めるとカモメが飛翔しているように見えることがあり幻想的です。特に、冬季は割と植物プランクトンが多く発生することから波の花の量も多くなり、季節を感じさせます。また、朝日や夕日に照らされると反射してキラキラとして輝きます。これもまた地元の季節的な風景を感じさせます。
このように厳しさを増す厳寒期に日本海沿岸の季節風がつくりあげた「波の花」や発電所での「波の花」も観点を変えれば厄介にもなったり、美しく見えたりするものではないでしょうか。
日本海の夕日(平成17年(2005)6月撮影)
*:温排水
火力や原子力発電所では、ボイラーや原子炉等で発生させた高温・高圧の蒸気でタービンを回し、タービンに直結されている発電機で電気を作って工場や各家庭に送っています。タービンを回した後の蒸気は、復水器という装置に導かれ、冷却のため海水で熱交換させて凝縮させ水に戻します。この水は再びボイラー等の給水として回収されます。一方、冷却水として用いた温度が数度上昇し、復水器から放水口を通じて海に戻されます。この放水された海水を温排水と呼んでいます。