<環境汚染シリーズ Part1>
株式会社エコニクス 環境事業部
生活環境チーム 山崎 浩之
水俣条約は、平成25(2013)年10月に熊本市・水俣市で開催された外交会議において「水銀に関する水俣条約」(Minamata Convention on Mercury)として採択され、平成29(2017)年8月16日に発効しました。
まだ条約が発効されて間もないのですが、条約の名前の由来は、我が国で深刻な環境問題となった「水俣病」を教訓として、世界の人々と共有して水銀対策に取り組むことを目的とすることを掲げ、日本国政府からの命名提案が採用されたようです。
この条約では、「水俣病のような水銀による深刻な環境汚染と健康被害を、世界のいかなる国や地域においても二度と繰り返してはならない」という決意が込められています。
具体的にこの水俣条約でどのようなものに規制がかかるかと言うと、ごく身近なものでは、水銀を使った電池(ボタン電池)、ランプ(水銀灯・蛍光灯)、また化粧品等(美肌用クリーム)が挙げられます。
私は子供の頃、風邪をひくとガラス製の体温計を使った事があります。この目盛の中に入っているものも水銀です。幼い頃、誤って体温計を割ってしまった時、コロコロと転がる水銀を見て不思議だな?と、その金属らしからぬ動きに魅せられた事を思い出します。この物質は手軽に利用できたため、いろいろな形で我々の生活の中で普及してきました。
この条約の発効を機に、世界各地で規制をする取り組みがはじまっています。その取組みを後押しするため、2013年10月に熊本市と水俣市で開催された外交会議において、日本は「MOYAIイニシアティブ」と冠した途上国支援と水俣発の情報発信を推進する、ということが表明されました。「MOYAI=もやい」とは船と船をつなぎとめる綱(ロープ)の結び方のことで、共同で一つの事に取り組むという意味が籠っており、これから人々が一丸となって取り組む姿勢を示したものです。
2020年までにすべての水銀添加物の製造・輸出入が禁止されますが、世界各地では健康被害や環境汚染のリスクが高まっており、発展途上国の小規模な金採掘現場では金を取りだすため、大量に水銀が今も使われていること等、解決すべき問題は未だ山積です。そのような情勢の中、「もやい」の精神で、一人ひとりが協力し、水銀添加製品の使用、廃棄等について改めてルールを見直すことが求められています。
今までなんとなく水銀添加製品を購入したり、分別せずに廃棄したりしてきたこれまでの行動を振り返り、これからは水銀の添加されていない代替製品の購入や、水銀添加製品の廃棄時の分別に目を向けることが大事なことだと思います。