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エコニュースVol.336

2021年06月01日

藻場を工学的に評価する技術(前編)

株式会社エコニクス 環境事業部
海域環境チーム 峰 寛明

1. はじめに

 藻場はコンブなど直接漁獲対象となる他、ウニ・アワビの餌料、稚仔魚の保育場として機能しています。CO2の吸収源としても着目されていますが磯焼けによりその面積が年々減少しています。
 私たちは藻場の回復を目指して様々な環境技術の開発、導入を続けています。
 今日はその一つ藻場分布とその制限要因の推定技術についてお話します。

 

2. 藻場の分布範囲を定量的に推定する考え方

 北海道日本海で主に分布する大型褐藻類であるホソメコンブはウニによる食圧(摂餌圧)を大きく受けており、これが磯焼けの重要な要因と言われています。摂餌圧の程度を左右する要因として多くの研究者が波浪に伴う海底面の流速の大きさを挙げています (川俣2001 など)。ウニは流速の最大値が40cm/sを超えると動かなくなると言われており、流速と摂餌圧の関係式が提案されています。
 海の波は場所や水深によって大きく異なり、外洋に面した海岸では内湾に比べ波高が高く、水深が深い所より浅い所の方が高くなります。従って、外洋の浅い海底では波浪流速が大きくウニの摂餌圧は小さいためコンブが生育しやすく、内湾の深い海底では波浪流速が小さいためウニの摂餌圧は大きく、コンブは生育しづらいというのがおおよその傾向です。波浪の大きさはコンピューターにより計算できることから、おおよそのコンブの分布範囲が推定できるのではないか、と期待できます。

 

3. 現地の藻場分布

 これらの発想を元にコンブ分布範囲の推定を試みました。当社は現場の環境調査が得意ですから、実際のコンブ分布と流速の大きさの比較を行い、推定の正しさを検証しました。調査は船上からのスポット的なビデオ撮影という非常に簡易な方法です。
 図1は対象海域での実際の海藻分布です。各々の場所で北方向(沖側)に海藻が分布している最大の水深をで示しています。海域の西側はコンブが主体で分布の最大は水深1m~5m程度と非常に浅いです。東西中央側はコンブとホンダワラが主体で最大水深は5m~10m程度です。東側はホンダワラが主体であり最大水深は10m程度の場所が多くを占めていました。磯焼け海域としてはかなり深くまで海藻が分布しています。この海域は北海道の海岸で、内湾、外洋、大きな河川の河口が隣接しており、評価するには非常に良い海域となっていました。[後編に続く]

 


図1 現地調査結果(海藻分布範囲図) (峰他2001)

 

【参考文献】
川俣 茂(2001):北日本沿岸におけるウニおよびアワビの摂食に及ぼす波浪の影響とその評価, 水産総合研究センター研究報告(1),pp.59-107.

 

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