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エコニュースVol.143

2005年05月01日

環境問題シリーズ Part5

妖怪とリサイクルの不思議な関係  

株式会社エコニクス 
 環境事業部 調査・計画チーム 大湊 航一

 ミレニアムとされた2000年以降、国内は未曾有の妖怪ブームと言われており、妖怪を題材としたお菓子のオマケやフィギュアなどが発売され、子供のみなら ず大人をもターゲットとした幅広い商業展開が行われています。コンビニやオモチャ屋の陳列棚を見ていても、コミカルなものからリアルな造形のものまで数多の妖怪が立ち並ぶ様はまさに百鬼夜行です。

 百鬼夜行はもともと平安の時代に幽鬼や霊魂が列を成して夜間に都大路を練り歩いていたことを指した言葉ですが、江戸時代に描かれた「百鬼夜行絵巻」の中に は、釜や笠、琵琶、しゃもじ、傘などの日用品が変じた付喪神(つくもがみ)が登場します。器物は百年間経つとヒトの念が宿り、魂を得て神となる。身の回りの器物が意思をもって歩いたり話したりするのは困るということで、多くの日用品は百年を経る前にお役御免として処分しなければならない。そういった百に満たない器物が半端な神つまり妖怪となって歩き出したものが付喪神だそうです。つまり九十九(つくも)神ということなのでしょう。

 リサイクルの文化が浸透していた江戸時代においては、器物はすべからく修理・修繕・再生しながら使用するものでした。百年使用された日用品が実際に処分 されていたか否かは不明ですが、絵巻の中に付喪神が登場した背景には「モノを大切にしなければ化けて出てくるぞ」という教えを次世代に遺す目的があったように思えます。つい先日、ノーベル平和賞受賞者でケニア環境副大臣のワンガリ・マータイさんが「もったいない」という言葉を国連で投げかけ話題となりましたが、江戸時代におけるリサイクルの基本はまさにこの「もったいない」の精神だったのでしょう。

 現代日本の最重要政策のひとつである「循環型社会の形成」ですが、この動きを「もったいない」精神の復興、あるいは江戸時代への回帰として位置づける見方 もあります。江戸時代に起きた付喪神の登場を一種の妖怪ブームとしてとらえると、リサイクルへの関心が高まった現代において再び妖怪ブームが訪れたことはなかなか面白い一致です。妖怪ブームがスタートとした2000年は、おりしも「循環型社会形成基本法」が成立した年でした。

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