<海の生物シリーズ Part22・魚類 その4>
株式会社エコニクス
環境事業部 海域モニタリングチーム 田中 禎孝
つい最近、ホッケの資源減少のため、漁獲開始以降初めて漁獲制限される(自主規制)と発表されました。ホッケと言えば、大量に漁獲されることから庶民の魚の代表格とも言われ、“ホッケの開き”は居酒屋の定番メニューでもあります。それだけに、このニュースは衝撃的でしたが、資源減少の問題が身近なものとなりつつあるということではないでしょうか。
魚類における資源減少の要因は、「漁獲能率の向上」、「藻場や干潟の減少」、「外来魚による生態系撹乱」、「乱獲」、「若齢魚の漁獲」など様々ですが、最近では愛好家の増加によって「釣り」の影響も無視できなくなっていると言われています。釣りの影響は、にわかに信じがたいかも知れませんが、これらに対して適切な資源管理が望まれます。
ところで、皆さんは「耳石」という言葉を耳にしたことはありますか。魚の頭部にあるカルシウム質のもので、魚をよく食べる方はゴリッとしたものを噛んだ経験があるかも知れません。耳石は、平衡感覚と聴覚に関する器官でいわゆる平衡石と呼ばれています。実は、この石に木のような年輪が形成され、それが資源管理に一役買っています。年齢査定という手法です。
耳石による年齢査定は、簡単に言うと耳石を研磨して写真(右)のような年輪を出し、その年齢を読むという作業です。ただ、実際は魚種によって年輪の見え方に差があるので、焼いたり、染色したり一工夫も二工夫も必要となる場合があります(これが意外と大変!)。個体ごとに年齢を読み、併せて体長や成熟度(大人になっているかどうかの判別)などの情報も収集し、これらのデータから成長式を求めます。例えば、以下の成長曲線(von Bertalanffy)では、この魚種は2歳で約250mmに達するということがわかります。仮に、2歳で成熟するとすれば、250mm未満のものはまだ大半が未成熟ということが推定されます。この未成熟個体の漁獲を減らせば、産卵前の個体が保護されるので、再生産が促され資源を大幅に減らすことなく利用できるようになります。
年齢査定の作業は、数多くの個体をこなさなければならないため、手間もかかり一見地味な作業ですが、こうして得られた成長式から漁網の目合いを決めるなど資源管理の一端を担う非常に重要な作業となっています。
カレイ類などは、比較的年齢が見やすいので(やすりで削って光に透かすだけでも結構見える)、皆さんも一度試してみてはいかがでしょうか。その際、「この魚、小さいけど大丈夫かな?」とちょっと考えてみてください。「小さい魚は獲らない、食べない、買わない」で、大切な資源を一人一人の心がけで守っていきましょう。